仏教と現代
こんにちは、坂田光永でございます。
「カウンセリング」というものを学んでいます。きっかけはいろいろあるのですが、とにかく必要性に迫られて、というのが正直なところです。
本を読んだり、人の話を聞いたり。学習方法はいろいろですが、そうやってカウンセリングというものに触れるたびに、私は『般若心経秘鍵』のこの「仏法遙かにあらず…」の一節を思い出します。
現代の日本の社会は、人の心にさまざまなストレスを与える社会のようです。学校でのいじめや不登校、家庭での児童虐待やドメスティック・バイオレンス(配偶者への暴力)、引きこもり、過労やリストラによる精神疾患…
これらを完全になくすことができるのか、また、なくすべきなのかは分かりません。ですが、そこに起こる人の心への重圧を和らげることは、社会的に急務です。
「カウンセリング」の技法や考え方は、このような状況に対して、実に多くの示唆を与えてくれます。
ポイントは、カウンセリングの創始者ロジャーズの「クライエント中心療法」という言葉で表されています。カウンセラーが答えを出すのではなくて、クライエント(カウンセリングでは患者という言葉を使わず来訪者=クライエントということが多い)が自ら、自分で決めて、問題解決が図られるように能力を養う。これがカウンセリングです。
まさに「明暗他にあらざれば」なんです。
もちろん、万能ではありませんよ。でも心の問題は基本的に、自分に無理な負担をかけずにすむような、自分らしい自分を見つけていくことが、解決の糸口になるような気がします。カウンセラーはその援助者、ということなのでしょう。
心の問題を解決するための糸口は、どこにある? 答えは「心中にして即ち近し」。1200年前の時代に、空海はカウンセリングの真髄を見事、言い当てているのです。ほこりをかぶったように見える仏教の言葉と、現代のカウンセリングとは、意外なほど、つながっています。
このたび「仏教と現代」をテーマに連載を始めました。「the Sky and the Ocean」(ザ・スカイ・アンド・ジ・オーシャン=空と海)というタイトルにしました。水平線を見ると、空と海はつながっているように見えます。仏教と現代の水平線も、見ることができたらいいな、と思っています。
2003年8月21日 光明院 坂 田 光 永