翌年8月

 つい最近、満月の夜があった。
いつもなら、お祭りがあった日だ。
いや、あの村に住んでいたら、というべきか。

 僕たちはどこにも集まらなかった。
あの夜、村のみんなはどこで何を思っていたのだろうか・・・

 でも、僕はお祈りした。
今年も無事で過ごせたことに感謝し、これからも無事に過ごせるように。
窓から、月を見ながら。

 突然電話がなった。
考え事をしていたので、少し驚いたが、落ち着いて受話器をとる。
「・・・もしもし?」
電話の主は、兄貴のお母さんだった。
兄貴とおねえちゃんが、いなくなったらしい。
「いつからなの?」反射的に聞く。
「確か、満月の次の日から・・・」
最初は、友達のところにでも行ったのかと思ったらしい。
しかし、それから連絡も無くもう数日帰ってきていないという。
だから、うちに来ていないかと電話してきたらしい。

 僕は、兄貴のお母さんに、ここには来ていないこと、来たら連絡するように言うことを約束し、電話を切った。
そして、僕は考える。
兄貴は、お姉ちゃんはどこに行ったのか。
そのうちに、兄貴の言ったことを思い出す。

「・・・神隠し、かな・・・」

 兄貴とお姉ちゃんは、自分たちの意思で姿を消したのか、それとも神隠しにあったのか。
それは、僕にはわからないことだ。
でも、兄貴たちには、きっと綺麗な湖のあるところで、月の綺麗な夜に会うことが出来る。
僕にわかっているのは、そのことだけだった。

(完)

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