「意外とこの坂はきついよな。」
ぼくは言った。
山につき、登り始めてからだんだん会話が減ったのだ。
「運動不足じゃないのか、兄者?」
せっかく場を和まそうとしたのに弟は憎まれ口を叩く。
ぼくたちはまたしばらく無言で歩いた。

 ある程度の高さまで来て、ぼくたちはあたりをきょろきょろと見回す。
弟は絵はがきを見ていた。
「見つかりそうか?」
「いや、似た風景は見当たらないな。」
ぼくはがっかりした。
「兄者、まだ始めたばかりだ、必ず見つかる。」
弟は励ましてくれる。
ぼくはちょっと元気が出た。
「さぁ、もう少し登ろうか。」

 中腹くらいまで登っただろうか、日がだいぶ傾いてきた。
「兄者、真っ暗になる前にテントを張れる場所を探そう。」
「そうだな。」
ぼくたちはテントを張れる場所を探した。

 少し高い所にテントを張れる場所があった。
ぼくたちはそこにテントを張り、女神様の作ってくれたおにぎりを食べた。
「明日の朝食はどうするんだ?」
弟は不安げに言った。
「一応、カップラーメンを二人分は持ってきた。」
キャンプのまねごとはできるくらいに荷物はある。
「まぁ、仕方ないな、おにぎりは腐るかもしれないし。」
食事を終え、ぼくたちはテントに入った。
「意外と広いな。」
「一人ではさみしいくらいさ。
・・・なぁ、兄者、なんで突然旅に出ようと思ったんだ?
本当に美子ちゃんのためだけか?」
弟は突然聞いた。
ぼくは少し考え、答えた。
「・・・そうだなぁ・・・それもあるけど、お前みたいに旅に出るのに憧れてたのかもな・・・」
ぼくは言った。
なんとなく、自分の心の奥が見えた気がした。
「で、お前は何でついてきてくれる気になったんだ?」
「・・・オレも、コマ兄みたいに家族と一緒にいたかったのかもしれないな。」
「え?」
「いいだろ、コマ兄で。」
「あぁ、構わないよ、護。」

 この旅で、ぼくたち兄弟のきずなは強まったように思う。
次は、あの絵に描いてある場所を探すだけだ。


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