「ねぇ、ぼくもやってみたいよ。」
「コマ兄は手加減できないだろ、俺がやる。」
今日の朝食はカップラーメンだ。
今、やかんでお湯を沸かしている。
といっても、わざわざ火をおこすようなまねはしないのだ。
狛犬本来の姿に戻って火を噴く。
これで万事OKなのだ。
「ぼくもやってみたいってば。」
「コマ兄は絶対手加減せずにやかんを溶かす。俺がやる。」
「10万度くらいの低温でやれば大丈夫だろ?」
「・・・このやかんの素材は知らんが、鉄は1500度くらいで溶けるぞ?」
「・・・・・・」
ぼくはお湯を沸かすのをあきらめた。

 朝食を終えて、ぼくらは頂上に上った。
「テントから、思いのほか近かったよな。」
「テント張らなくても、ここに山小屋があったんだな・・・」
「しかも、自由に使ってよかったみたいだ。」
あまりのことに、ぼくたちは笑った。

「おい、コマ兄、ここになんかあるぞ。読めるか?」
ぼくは女神様に字を習ったが、護はひらがなくらいしか読めない。
促されるままに見てみると、鉄板に何か書いてある。
この小屋で画家が描いた絵が近隣の美術館で飾られているとのことだった。
「ちょ・・・もしかして」
ぼくたちは周りを見回した。

「この風景、見当たらないな・・・」
「森や田んぼは、もう大きな建物になっているんだね・・・」
「美子ちゃんになんて言おう・・・」
護はすごく申し訳なさそうにしている。
ぼくは絵葉書を見ながら少し考えた。
「そうか・・・山だ。」
「は?山?」
「この絵の後ろに、山が広がっているだろう?山の形はそう簡単に変わらないはずだ。」
「なるほど。」
ぼくたちはもう一度見回した。
「あの山の形がこの絵に似ている・・・この方向じゃないか?」
「・・・確かにそうだな・・・うん、間違いない。」
ぼくたちは、ついにあの絵の描かれた風景を見つけた。


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