今日はコンサートに来ていた。
先日、女神様がコンサートホールのお祓いをしたとき、チケットを2枚もらったのだ。
美子も一緒だが、彼女は小学生未満、ということでただで入れた(実際の年齢はわからないのだが)

「ここには、どんな物の怪がいたんですか?」
ぼくは興味本位で聞いてみる。
「珍しいね、コマがそういうこと聞くの。」
確かに、ぼくはあまり聞かないことだった。
「近くで大きな事故があったでしょう?そのときの被害者よ。」

 開演30分以上前だが、ステージには演奏をしている人たちがいた。
「もう演奏が始まるんですか?」
「ううん、あれは音を出してるのよ。
楽器をある程度温めておくためにしているのよ。」
「楽器は、温めないといけないの?」
今度は美子の質問だ。
「温度が変わると、音の高さも変わってくるのよ。」
「よく、わかんない。」
とにかく、練習の類だろうとぼくは思った。

 コンサートでは、有名な曲が演奏された。
「この曲、テレビで時々聞きますね。」
演奏の合間に女神様に言う。
「私も、聞いたことあるよ。」
美子も得意げに言う。
「そうね。有名な曲だよね。でも、全部通して聞いたのは初めてでしょう?」
「えぇ、初めてです。」
ぼくは弾んだ声で返事をした。

 一番最後の曲がすごく印象的だった。
5曲を組み合わせてあって、10分以上かかる曲だった。
3曲目がリズムが今まできたことの無い感じだった。
少し切ない感じがした。

「オレ、いつかあの楽団に入るんだ。」
全プログラム終了後、後ろでそんなことを言っている人がいた。
「兄さん・・・まずは受験勉強をがんばってくれ・・・」
よく見ると、お祭りのときのフルート少年とその弟だった。

「コンサート、すごくよかったですね。」
「そうね、CDと違ったよさがあったでしょう?」
美子は眠ってしまってぼくがおんぶしている。
「本物ってすごくいいですね。」
ぼくも女神様も、すごく満足していた。


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