「畳の上でごろごろしたい!!」
「畳の上でごろごろしたい!!」
ぼくと美子は板の上をごろごろ転がりながら駄々をこねる。
温泉旅行以来畳がほしくなってしまったのだ。
「そんなことを言われてもねぇ・・・」
女神様が困ったように答える。
言ってそう簡単に手に入るものではない。
それはぼくも美子もわかっていることだった。
でも、ちょっと駄々をこねてみたかった。
これでどうにかなったら儲けもの、くらいに考えて。
「いろいろ考えてみるけど、すぐには無理よ。」
というのが女神様の返事だった。

 朝食が済むと女神様は地鎮祭に出かけた。
ぼくと美子は二人でお留守番だ。
「さぁ、中の掃除をしようかな。」
ぼくは箒を出そうとする。
「ねぇ、草むしりもそろそろなんじゃない?」
美子に指摘される。
「ん・・・そうだね・・・どうしようかな・・・」
美子は意外としっかりしている。
「じゃぁ、草むしりをしてくるよ。」
ぼくは外に出る。

 草むしりが半分ほど終わるとお昼ご飯の時間になった。
あわてて中に入って作り始める。
そこへ女神様が帰ってきた。
手には何か大きな巻物を持っている。
「ただいま。お土産を買ってきたよ。」
そういうと巻物を広げた。
「わぁ、畳だ。」
「ごろごろできる!!」
「これはござよ。まぁ、似たようなものだけどね。」
ぼくたちはそれを早速広げる。
ぼくと美子はすぐに寝転がる。
「畳の感触だ!!」
「気持ちいいね。」
「私もしようかな。」
そういうと女神様も横に寝転がった。
「ありがとうございます。すごくうれしいです。」
「畳、すごくうれしい。」
ぼくたちは3人でごろごろしていた。

「あぁっ!!もうこんな時間!!」
女神様の声が聞こえる。
「ん・・・おはようございます・・・どうしたんですか・・・?」
「おはようって・・・夕方だよ。」
「え・・・?」
いまいち状況がつかめない。
「わけがわからないって顔してるけど・・・3人とも畳でいつの間にか寝てたのよ。」
「あ・・・あぁぁ!!まだお昼ご飯食べてない!!」
大事なことを思い出した。
「そうなの、それよ。晩御飯の準備全然してないのよ。」
外を見るとだいぶ暗くなっていた。
「もうスーパー閉まっちゃう時間なのよ。」
「あ・・そういえば・・・」
ぼくは台所を見る。
なべの中には伸びきったおそばが浮いていた。

 その夜は伸びたそばを食べながら畳について語った。
いきなり失敗したけど、それでも畳がうれしかった。

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