ぼくは花を見ていた。
すごくきれいだなって思った。
ここに来るまで花をきれいだと感じる余裕はなかった。
だから、単純にうれしかった。
「それはすみれの花ね」
後ろから来た女神様が教えてくれた。
「へぇ…これがすみれなんですか…
じゃ…あれは?」
小さくて青い、きれいな花を指差す。
「あれは…おおいぬのふぐりよ」
「すごいなぁ…女神様って何でも知ってるんですね」
ぼくは言った。
「いや…そんなに詳しくはないのよ。昔、ちょっと図鑑で調べただけ。
あ・・・そうだ、ちょうど種があるんだけど、育ててみない?」
「えっ!!育てたいです!!なんて花ですか?」
「えぇ、ひまわりの種をもらったの。」
ぼくたちは、ひまわりの種を取りに行った。
ひまわりの種は、黒くて細長かった。
神社の建物の横に、小さな花壇を作る。
土を耕して肥料を混ぜ、種を植えた。
「いつごろ、花が咲くんですか?」
思いのほか、生き生きした口調になる。
「そうねぇ・・・7月の終わりくらいかしら・・・」
「楽しみですね。」
ぼくは空を見上げた。
この空が夏の色に染まる頃、ぼくのひまわりが咲くのだ。
「楽しみですね。」
もう一度、しみじみという。
「えぇ、そうね。」
女神様の横顔も、どことなくうれしそうだった。
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