ぼくはしばらく、弟の後姿を見ながらぼうっとしていた。
弟は一匹狼だった。
だから、今度の旅にもあてがないのだ。
大丈夫かな、と少し不安になる。

「明日、この桜の木の下でお花見でもしようか」
「え?」
突然、女神様が言った。
「だって、元気ないよ」
そういって、やさしく微笑みかける。
ぼくは何度もこの笑顔に救われてきた。
確かに弟が旅立ち、少し淋しかった。
「まだ、気が進まない?」
「いえ…そんなことは…お弁当、ぼくが作りますね!!」
淋しい時に励ましてくれる。
ぼくは女神様が大好きだ。
「やっと、笑ったね。」
女神様がうれしそうに言う。
「コマ兄、少しは元気出た?」
「もちろんだよ。ありがとう。」
明日のお弁当、女神様と美子の好きな物をたくさん作ろう、ぼくはそう思った。


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