近所の大きな神社の神様に呼び出されたのは、11月も終わりのことだった。
神社に入ると、大きな銀杏の木が2本ほどあった。
銀杏の黄色い葉が地面を見えないほどに埋め尽くしている。
「うわぁ・・・きれいだなぁ・・・まるで黄色いお布団敷き詰めてるみたい。」
見とれてばかりもいられないので中に入って挨拶をする。

「あら、コマ君、お久しぶり。中に入って奥の部屋です。」
社務所でれんさんに場所を聞き、奥へ行く。
「こんにちは、お久しぶりです。」
ぼくはそう挨拶をする。
「あぁ、久しぶりだね。この神社に入ってきてどうだったかね?」
「えぇ、銀杏の葉っぱが地面を埋め尽くしてとてもきれいでした。」
「コマ君はそういうのが大好きだと聞いていたからね。
そう返事が来ると思っていたよ。
ちなみに、うちの銀杏は町内の小さな観光地なんだ。」
神様は得意げに言う。
「えぇ、観光にもってこいな風景でした。」
今度、女神様と美子と一緒に来たいな、と思う。
「そう、観光地だから苦労もあってね、実はそのことで君を呼んだんだよ。」
と、神様は言った。

 話を簡単にまとめると観光シーズンが終わったらすぐに掃除、ということらしい。
この神社での2回目のバイト。
日時は来週の月曜日(例年日曜までは観光客が多いらしい)。

 ぼくは帰る前にもう一度見渡した。
「ほんとにすごいなぁ・・・」
鳥居のそばまで歩くと、れんさんが買い物袋をさげて帰ってきていた。
「あら、もう帰るの?」
「はい、用事は済みましたので。何なら荷物はこぶの手伝いますよ。」
「そう、ありがとう。」
れんさんはぼくに大きいほうの荷物を手渡した。

 荷物を運び、中身を冷蔵庫にしまって片付けてしまうと、れんさんがぼくのほうを向いていった。
「少し時間ある?御礼に少し案内するよ。」
ぼくたちは観光名所のこの神社を一緒に回ることにした。

 れんさんは回りながらいろいろなことを教えてくれた。
この銀杏がいつからあるのか、とか、この神社の歴史とか。
隣には小さな公園がくっついていたのでそこのベンチで少しお話もした。
今の生活のこと、とか。
「まだ、あんまり人間の生活に慣れていないのかな?」
れんさんは笑いながら聞いた。
「うぅ〜ん・・・だいぶ慣れたつもりではいるんだけど・・・」
この間の幽霊自動車を壊した話とか、友達の家の幽霊を供養した話とかをしたときの返事だった。
「食べ物中心に考えてもだめよ。」
れんさんはおかしそうに言った。

 そのあと、ぼくは家に帰った。
来週の日曜日、女神様と美子と観光に行こう、と考えながら。


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