神社から少しはなれたところに、小さな科学館がある。
女神様は仕事でその近くを何度か通ったことがあるらしく、興味を持っていたらしい。
「科学館に行ってみようか。」
ある日曜日の女神様の言葉。
ぼくも美子も、二つ返事で大賛成だった。
バスで10分くらい行ったところに科学館はあった。
市が経営しているので入場料はそんなに高くない。
ぼくはどきどきしながら門をくぐる。
「少し古い感じがしますね。」
「十数年前にはあったからね。」
女神様はずっと来たかったのだそうだ。
「何か、面白そう。」
美子はすごく喜んでいた。
中に入ると、最初は星の軌道を模型であらわしたものがお迎えだ。
ボールがぐるぐると回っている。
「これが星の動き方なのね。」
女神様は真剣に見ている。
「ボールがぐるぐる回って、面白い。」
美子はよくわかっていないようだ。
ぼくたちは、3人一緒に見て回った。
古い科学館だからか、日曜だというのに客の入りもまばらだった。
だから女神様は比較的ゆっくり見ている。
ぼくと美子は満足したら女神様が満足するまで横でおしゃべりをして過ごした。
「これ、すごいね。」
パラボナアンテナから、美子の声が聞こえる。
「そうだね。これで会話ができるんだね。」
パラボナアンテナが、二つ離れた位置においてある。
お互いに、それで会話ができるのだ。
ぼくと美子は、それでずっと会話をしていた。
女神様は、ずっとその原理を読んでいた。
その近くに、テレビ電話が置いてあった。
かかってきた電話の受話器をとると、テレビ画面には美子と女神様が現れる。
「もしもし?」
「相手を見ながら電話ができるんだね。」
ぼくたちは、取り留めのないことをいろいろ話した。
「これ、すごいよね。」
ぼくは、今、放電の実験を見ている。
三日月状の光が鉄の棒の間を下から上へとのぼっていく。
「コマ兄、もう8回目だよ。」
美子が笑いながら言う。」
「ほんとに、好きなものは徹底的に見るんだから。」
女神様も笑っている。
科学館には光の三原色の実験や、ストロボで影を残す実験があった。
でも、小さな科学館だったので、全部見て回るのに2時間かからなかった。
「楽しかったね。」
美子はすごく満足そうだ。
「そうだね。すごく楽しかった。」
「私も、ずっと来たかったのよ。
一人じゃ来にくかったから、二人のおかげね。」
女神様も、すごくうれしそうだ。
「また、みんなでどこかに行きましょうね。」
帰りのバスの中、ぼくたちは幸せな気分だった。
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