美子は、最近怖い話が好きだ。
もっとも、狛犬であるぼくには、何が怖いのかよくわからないが、
とりあえず物の怪が出たら怖い話らしい。
「ねぇ…こっくりさんのやり方知ってる?」
美子は友達に会うたびにいろいろな遊びを覚えてくる。
今回もその類だろう。
「こっくりさん?知らないなぁ…どんな遊び?」
「私もよく知らないんだけど、いろいろ知りたいことがわかるらしいの」
辞典のようなものだろうか。
勉強のためならば協力を惜しむわけにはいかない。
「わかったよ…ネットで調べてみよう。」
「ありがとう」
部屋の奥に奉納されているパソコンを引っ張り出し、起動させる。
そしてネットでいつもの掲示板に書き込みだ。
「こっくりさんのやり方を教えてください。妹が勉強に使います。」
これでばっちりだ。
明日の朝には恐ろしい量の返事が返って来ているに違いない。
翌朝、日課の掃除を終わらせ、早速確認してみる。
「どれどれ・・・どんな返事がきてるかな・・・?」
物の怪の類の特権でネット回線に割り込んでみる。
ちょっとどきどきだ。
「>コマイヌさん
こっくりさんは非常に危険です。やめたほうがいいと思います。」
「あ・・・あれ?おかしいな・・・」
「>コマイヌさん
やらない方がいいんじゃないですか?危ないですよ。」
「・・・二人連続で?」
「>コマイヌさん
私が子どものころ、親に絶対にやってはいけないといわれました。
学校でも勝手にやった人が大変な騒ぎを起こしたことがあります。」
「・・・・・・」
結局、ネットでは情報が手に入らなかった。
しかしどうやら、大変危険なものらしい、とだけはわかった。
最後の情報を見ると、学校で行うもののようだ。
やはり辞書の代わりに使う、という可能性が強くなってきた。
学校では「りか」とか「たいいく」とか、危険な勉強もするという。
ほぼ間違いないだろう。
「コマ兄、こっくりさんのやり方、わかった?」
ようやく起きてきた美子に聞かれる。
「いやそれが・・・みんな危険だからやるなって・・・」
「コマ兄・・・ひどい!!」
美子は泣きながらかけていく。
「えぇぇ!?ちょっと待ってよ、オレのせいじゃないってば!!話聞いてた?」
美子は結局昼食くらいまでぶーたれていた。
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