ぼくはいつものように掃除をしていた。
神社の入り口の木の一本は桜だ。
この時期は花びらが散るのでぼくは階段下の掃除まですることになる。
するとそこへ一人の旅人が通りかかる。
旅人はこちらを向いて一言言った。
「ん…もしかして兄者か?」
「え…もしかして弟かい?」
ぼくはそう返事をした。
変な話だが、人間の姿で会うのは初めてなのだ。

お互いにまじまじと見つめあい、弟が先に口を開いた。
「久しぶりだな、兄者。」
ずいぶんくたびれた格好になっている。
「こんなところでどうしたの?北へ旅立ったんじゃなかったっけ?」
「もう2年近く前の話だぞ。今度は南へ行こうと思ってな。
久しぶりにこの町を通ってみたわけだ。」
「そうか。戻ってきたわけじゃないんだ。
まぁ、なんだ、とりあえず掃除を手伝ってくれ。」
「・・・・・・」
結局弟は階段に座って見ている、といった。

「それにしても・・・なんだな、少し丸くなったか?」
「ん・・・まぁ、食べすぎだとは時々言われるけどね。」
実は結構気にしていることだった。
「いや、そうじゃなくて・・・何というか・・・以前のような気迫がないぞ。」
「まぁ、いまは物の怪と戦ったり呪いを止めたりすることがないからね。」
「ふん・・・情けない・・・」
頭に来たが我慢して掃除を続ける。

「あぁもう!!花びらってなかなか取れない!!頭にくる!!お前も手伝え!!」
ぼくは掃除をしながら弟に言った。
そこへ上を掃除していた女神さまが来る。
「コマ?どうしたの?」
「え?あぁ、いや、何でもないです。」
弟が上を見上げる。
「あんたは・・・ここの神様・・・ですか?」
「えぇ、そうだけど・・・」
女神様はきょとんとしている。
「この子はぼくの弟です。」
「この子って言うな!!」
なぜか弟は怒る。
「まぁ、そうなの。立ち話もなんだから、上がってきたら?」
ぼくたちは、中に入って話すことになった。

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