弟は、神社の敷地内にテントを張った。
「明日かあさってにはまた旅に出るぞ。」
「わかってるよ。」
テントを張りながらの会話だ。
何でこんなことになったんだか・・・
「それにしても・・・コマってのが兄者の名前か?」
「まぁ、一応ね。狛犬だからコマ、ってここに来た時に女神様がつけてくれたんだ。」
「ふうん・・・そうか。」
弟はそれ以上追及しなかった。
その夜は、弟も食事を一緒にとった。
最初は嫌がったが、ぼくを見に来た、ということで結局一緒に食べることにしたのだ。
「兄者は料理もするのか。」
というのが弟の感想。
それ以上は何も言わなかった。
弟は食事が済むと、食後の風景を少し眺めてテントに戻った。
「ふぅ・・・」
ぼくはついため息が出てしまう。
「コマ兄・・・疲れたの?」
美子が心配そうにぼくを見ている。
「うん、まぁね。でも大丈夫だよ。」
「私もどうしようかと思ったんだけど、二人が喧嘩したまま別れるのも、と思ってね。
ごめんね、疲れるようなことさせて。」
女神様も少し落ち込んでいるようだ。
「いえ、あいつがいる間に何とかしますよ。ありがとうございました。」
その夜、ぼくたちは疲れていて早めに眠るのだった。
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