今日もぼくはいつもと同じ時間に起きた。
昨日はなかなか眠れなかったので少しきつい。
ぼくは一度背伸びをしてのそのそと布団から出る。

 外に出て掃除を始める。
空はうっすらと明るく、きれいだ。
弟に会ったらなんと言ってくるだろうか。
それが少し不安だった。

「兄者、起きているのか?」
テントから弟が顔を出していた。
「あぁ・・・おはよう。」
「昨日はすまなかったな、つい頭に来て・・・」
弟は、昨日に比べ少し神妙な顔をしていた。
「お前はどんな生活をしていたんだよ?」
ぼくらは二人とも、戦いとは無縁の生活になったはずだ。
「オレは旅に出ていたぞ。そこでならず者に喧嘩を売られて
路地裏で殴り合いなんてザラだったな。
まぁ、狛犬じゃなくなっても殴り合いの生活をしてたんだ。」
ずいぶんと大変な生活をしていたようだ。
「まぁ、ぼくとは正反対の生活をしてたんだな。」
「そういうことだ。だから兄者の変わりように驚いたんだ。」
それなら昨日の態度も仕方がないのかもしれない。
「お前も、ここで生活してみるか?女神様も美子も、きっと歓迎してくれるよ。」
「いや・・・今日中には南に行くよ。昨日のことで居心地が悪い。」
ずいぶんとしおらしい顔をしている。
「ははは・・・じゃぁ、家事を少し手伝ってくれ。それでいいと思うよ。」

 昨日とはうってかわり、弟はまじめに掃除をした。
「掃除なんて初めてだ。なかなかいいものだな。」
まんざらでもない、といった感じで掃除を続ける。
「ぼくは苦手なんだけどね。」
「まぁ、兄者は大雑把だからな。」
小ばかにされた感じだが、それも久しぶりに会った弟だと楽しい。
「まぁ、あなたも手伝ってくれてたのね。」
女神様が顔を出して言う。
「朝ごはんの準備ができたから区切りのいいところで戻ってきてね。」
ぼくは集めたごみをちりとりで集める。
「そろそろ行きますか。」
「そうだな。」
弟もなんとなくうれしそうだった。


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