朝、ぼくは一番に目をさます。
なぜか、朝寝坊できない体質なのだ。
まだ、女神様も美子も眠っていた。
「兄者、起きたか。」
「ん・・・もう起きてたのか?」
「まあな。何か楽しくて目が覚めてしまった。」
「ぼくは掃除をしてくるけど、お前はまだ寝ていいよ。」
「いや、手伝うよ。」
どうやら弟は掃除が気に入ったようだ。
「何かうらやましいな、こういう生活。」
「初日に突っかかってきた理由、半分はそれかい?」
冗談半分で聞いてみる。
「まぁ・・・そうかもな・・・」
弟は複雑な表情で答えた。

 今日はすばらしく晴れていた。
雲がひとつもなく、地平線まで真っ青だった。
「楽しかったけど、でもオレは一匹狼だから。」
弟は、旅立つ準備をしながらいった。
「まぁ、いつでも来いよ。」
「こちらを通るときはそうさせてもらう。」
テントをたたむだけだが、ぼくはやったことがないので手伝えなかった。

 昼食後、弟は旅に出た。
「女神様、美子ちゃん、兄をよろしく頼みます。」
「礼儀正しいのね。」
「コマ兄のことは任せておいて。」
何かを忘れているような気がする。
ぼくはここでコマと呼ばれるようになったのだが・・・
「あ・・・お前の名前、何にする?」
「名前か・・・考えたこともなかったな。」
「今度来るまでに、何か考えておこうか?」
と女神様。
「えぇ、一応お願いします。でも、旅の中で、何か名前が付くかも知れません。」
「そうか、そうだよね。」
ぼくは答える。
「たまに手紙を書きたいんだが住所を教えてくれるか?」
「え・・・?ここどこになるんですか?」
この2年間、考えもしなかったことだった。
女神様がメモを書いてわたす。

「それじゃぁ、ありがとうございました。」
そういうと、弟は旅に出た。
ひらひらと舞い落ちる桜の花びらの中、弟の後姿が小さくなっていく。
次はいつ戻ってくるのかな、見送りながら考えていた。


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