近所の大きな神社の神様に呼び出されたのは、7月も半ばのことだった。
そこの神様もぼくたち同様、人間の格好で生活している。
「用件というのは、今度のお祭りのことなんだよ、コマくん」
「はぁ…」
「君にやぐらを作るのを手伝って欲しい」
「はい、わかりました」
「最後の週の日曜日なのだが予定は大丈夫かね?」
「はい、大丈夫です」
「もちろん、バイト代も出る」
バイト…今までバイトはしたことがなかった。
「何か不都合でもあるのかな?」
ぼくの戸惑った顔を見て質問された。
「いえ…お手伝いならともかく、お金をいただくとなると…
うちの女神様に相談が必要になるかと…」
「そうか…いい返事を期待しているよ」
その日はそれで終わりだった。

「ただいまぁ〜…うぅ〜…疲れた…」
よその神様に呼ばれるとさすがに緊張する。
足なんてガクガクだ。
家に帰ってすぐにごろごろする。
「おかえり…って帰って来ていきなりごろごろして」
女神様があきれ半分、おかしさ半分といった感じで言う。
「うぅ〜…ただいまぁ〜」
ぼくはもう一度言う。
「疲れてるのね」
「さすがによその神様に呼ばれると…」
「そうよねぇ」
女神様は冷たい麦茶を出してくれた。
「ありがとうございます」
「で、用事は何だったの?」
早速本題だ。
「今度のお祭りでやぐらを使うからやぐら作りのバイトをしてくれって言われました。」
「そう。大変ね。頑張っておいで。」
「え?行っていいんですか?」
思いのほかあっさりしたことを言われた。
「お金がからむから相談しようと思いまして…まだ返事はしていません」
「行っていいよ。
人間として生きていくんだからいろいろなことを経験しておかないとね。」
早速向こうの神様にバイトOKの連絡をする。

今までお祭り自体行ったことがないから今から楽しみだ。


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