その日は、朝から晴れていた。
太陽がまぶしく、目を開けるのも大変なくらいだ。
今日はやぐらを作りに行く。
作って、祭りが終わったら、その日のうちに解体してしまう。
朝は8時に集合だ。

 気温が高く、ついたときには汗びっしょりだった。
「よう、新人、今日はよろしくな。」
日焼けした、マッチョなおじさんが言う。
「まぁ、倒れない程度にがんばってくれよ。」
もう一人のおじさんも言った。
こっちも日焼けして筋肉もりもりだ。
顔がまったく同じ、双子だ。
後で聞いたのだが、この二人もぼくと同じく、狛犬だった。
この神社で、主に大工仕事と警備員をしているらしい。

 やぐら作りは、木を言われたとおりに組めばいい。
初心者でもできない仕事ではない。
柱や足、板を立てる位置にに運び、組む。
組んだら立てて足場になる板をつける。

 8時過ぎに始めて、昼前には終わった。
来ていたTシャツは汗でびっしょりぬれている。
「がんばったな、新人。」
「来年もよろしく頼むぞ。」
ここの狛犬さんたちが言う。
「来年の前に今夜の解体が・・・」
「はっはっは、そうだったな。」
「意欲が旺盛でよろしい。」

 ぼくたちは、仕事が一通り終わって、談笑していた。
そこへ、一人の女性がお茶を持ってきた。
「お疲れ様です。」
そういって、お茶を注ぎ分け、それぞれに配る。
「あ・・・ありがとうございます。」
女性は、お茶を出すと、
「では、ほかの仕事がありますので」
と一言言い、帰っていった。

 ぼくはその動作を、なんとなく見ていた。
「おぉ?ほれたか?」
「まぁ、うちの看板娘だからな。」
彼女は、ここの神社の池の主(鯉)だそうだ。
ぼくたち同様、人間の格好で生活している。
この神社で、主に巫女さんをしているらしい。

 今まで、自分の神社のことしか知らなかった。
こうやって、同じようなことをしている人たちは、結構いるんだな、と思った。
それだけでここにバイトに来た意味がある、と思った。
何か、世界が広がった感じだ。
さぁ、帰って女神様と美子に昼ごはんを作ろう、少しいい気分で思った。


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