近所の神社でお祭りがある。
今日、女神様にそう連絡が来た。
「行って来るんですか?」
「そうね、みんなで行きましょう。」
「やったぁ、お祭り、大好き。」
どうやら、人をたくさん呼びたいそうで、旧知の仲の女神様にお声がかかったのだそうだ。
そして、そこにはぼくたちも来てほしいとのこと。
「じゃ、たこ焼きと綿菓子は買わないといけないね。」
「りんごあめも買って。」
今から、お祭りに行くのが楽しみだった。

 当日、ぼくは辺りをキョロキョロと見回す。
「ん・・・たこ焼きとか、綿菓子とか・・・ないのかな?」
「りんごあめ・・・食べたかったな・・・」
横で女神様がふふふ、と笑う。
「ここはね、小さいからお客さんが集まったらその次の年から出店を呼ぼうか、
って話になっているのよ。だから私たちも呼ばれたの。」
「そうなんですか。」
出店はまったくなかった。
小さなステージがひとつ、境内にあるだけだ。

 ステージの近くに一人、笛を練習している人がいた。
すごくきれいな音色だ。
「あれはフルートね。」
女神様が言う。
「すごくきれいな音だね。」
美子が感想を言った。

「兄さん、何やってんだよ?」
フルート少年のそばにもう一人少年が近付く。
「あぁ、洋介、フルートを今日のお祭りで演奏するんだよ。」
「今年受験じゃないか。帰って勉強しろよ。」
どうやら兄弟のようだ。
「今日はお祭りだから出ないといけないんだよ!!」
ずいぶんともめているようだ。
結局、フルート少年はお祭りで演奏することになった。

 お祭りでは、ステージでいろいろなイベントがあった。
能もあったし、歌もあった。
でも、フルートが一番きれいだった。
「あのフルート、すごくよかったね。」
「そうね。すごく練習したんだろうね。」
「私も、フルート吹きたい。」
そんな会話をしていると、さっきの兄弟がいた。
「ハル兄さん、急いで帰って勉強しないと。」
「洋介、感想くらい言ってくれてもいいだろ。」
帰るときまで兄弟げんかをしている。
ぼくは、それを見て少し笑ってしまう。
「コマも、弟から手紙が来るといいね。」
「そうだね、また遊びに来て欲しいね。」
「ん・・・そうですね。今度はいつ来るのかな・・・」
ぼくは弟のことが少し懐かしくなり、夜空を見上げるのだった。


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