ぼくは弟を近所の丘の上に連れて行った。
「ここは?」
「近所の丘の上。名前は知らない。」
「俺たちの住んでいた神社がよく見えるな。」
弟は感心している。
「そういえば、1年半ぶりなのに、まともに挨拶もしてなかったね。」
「緊急事態だからな・・・そういうわけにも行くまい。」
弟は神社から眼を離さずに言う。
「元気だったか?」
「あぁ・・・まあな・・・」
やはり弟は神社から目を離さない。
「そういう話はすべてが終わってからだ。」
弟は神社のみを見ている。
「すべてが終わって、二人とも無事でいられるのか?」
「やはり、ずいぶん変わってしまったな・・・」
弟は言う。
「だが、そう言ってもらえるのもうれしいものだ。」
弟は少し微笑んだ。

 ぼくたちは、互いに少しずつ近況報告した。
そして神社をしっかりと見る。
「神木に黒い何かが付いてるね。」
離れているし日もだいぶ傾いていることもあってそれ以上は見えない。
「あれが実体化した呪いだ。
ここからではよくわからんが、近付けばくねくね動いているのがわかる。」
「うわぁ・・・あまり行きたくないなぁ・・・」
話を聞くだけで気持ち悪い。
「放って置けばとんでもない事態になるぞ。」
「わかってるよ。」

 ぼくたちは今後のことを話し合った。
「夜は危険だから明日の朝一にお清めをして回ろう。
それから、丑の刻参りにに来たやつらを追い返すぞ。」
「時間かかりそうだけどそれが確実だね。直接戦うより危なくないし。」
「では、今夜から追い返し作戦だな。」
弟は立ち上がる。
「一応、女神様にも報告だね。」
ぼくも立ち上がった。
「晩御飯、食べたいものある?」
ぼくは弟に聞いた。
「相変わらずのんきだな・・・オレは犬だから肉類が食べたいな。」
ぼくたちは、スーパーに向かった。



戻る