ぼくは大抵の家事ならこなせる。
ここに来て結構頑張ったのだ。
しかしどうしても掃除だけは苦手だった。
それでも年が明ける前に倉庫を片付けるという女神様には従うしかなかった。

 倉庫を開けると埃がたった。
「うわ…すごい埃だ…」
思わずくしゃみが出る。
女神様を見るとマスクをしていた。
「はい、これ」
そう言ってマスクを手渡される。

 中を見ると、たくさんの物が所狭しと並んでいる。
火縄銃や日本刀、人形など。
それに、機械類も結構あった。
「これは…?」
「お祓いしたけどなかなか処分できないものよ。」
「もう憑いていないんですか?」
「えぇ、どれもちゃんとお祓いはすませたからね」
改めて見回すとすごい量だ。
「で…掃除ってこの辺のものを粗大ゴミか何かに出すんですか?」
「ううん、コマが一度倉庫から運び出して私が中の掃除をするの。
もちろん、外で埃をはらってね。」
埃を払うだけなら掃除が苦手なぼくにもどうにかなる。
「えっと…美子はどうして中の掃除なんですか?」
「だって、どんないわくがついてたか、小さな子どもに聞かせたい?」
ぼくは猛烈に首を振る。

 手前のほうからいろいろ出していく。
大きいものや小さいもの、重いもの、軽いものとさまざまだ。
「この刀、どんないわくがついていたんですか?」
ぼくは見つけた刀について聞いてみた。
「あぁ、それね・・・それは戦国時代に持ち主が変わるたびに下克上で主人の首を・・・」
「わぁぁ・・・いいです!!えぐい話はちょっと・・・」
話がえぐいものになりそうなのであわててとめる。
美子がいなくてよかったと思う。
「でもね、怨念を祓った後もずっと清めてたから今ではお守りにもなるはずよ。」
「へぇ・・・そうなんだ・・・」
そういわれると、持っていて気持ちがいいような気がする。

 またしばらく話しながらいろいろ出していると、今度は火縄銃が見つかる。
「これは火縄銃ですね。どんないわくがついてたんですか?」
「えっと、それは確か小型化しても精度、威力は変わらない特別製で
すごい技術力だから戦国時代にそれをめぐって謀殺や戦争まで・・・」
「ちょ・・・ごめんなさい、もういいです!!」
やっぱりここにあるのは恐ろしいいわくつきのものだ。
「でも、それもお守りにできるくらいにはしてるのよ。」
と、女神様は説明するのだった。

 そのほかにも事故死した野球少年の持っていたスピードガン、
幼くして病でこの世を去った少女のぬいぐるみ、
おばあちゃんの形見の日本人形など、いろいろあった。
昼過ぎに始めて全部終わらせると夕方だった。

「大変だったね、ご飯の前にお風呂に入ろうか。」
女神様が言う。
「そうですね。体がずいぶん埃っぽくなりましたし・・・」
そこへ中の掃除を終わらせた美子が来る。
「お風呂掃除、終わったよ。」
気を利かせてお風呂も掃除してくれていたらしい。
「じゃぁ、お風呂沸かしますね。」
「なら、私は晩御飯のお買い物に行って来るから。」
ぼくたちは、今年最後の夜の準備を始めた。


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