「うちの子は何を食べてもおいしいっていうからあてにならないと思うよ。
え、それでも構わないの?じゃぁ、話してみるから。」
女神様が電話をしていた。
何と言うか・・・ずいぶんな言われようだと思う。
「コマ、さっきの電話聞いてた?」
「えぇ、まぁ・・・」
「バイトを頼まれたの、試食をしてほしいってね。」
食べ物を食べた上にお金までもらえるなんて嬉しい限りだ。
「いつものあの神社ですか?」
夏祭りの櫓作りとか、いちょうの葉っぱ掃除とか、ぼくをバイトに呼んでくれるのはあそこくらいのものだ。
「今日は違うところなの。」
女神様は簡単な地図を描いてくれる。
「あなたはきっと喜ぶ仕事だと思うよ。」

 自転車で隣町までやってくる。
目印のコンビニの裏に行くと、少し大きな神社があった。
「ここかな・・・」
ぼくは階段を上る。
見回しても誰もいないので社務所に行ってみる。
「いらっしゃい、君がコマくんだね?」
「えぇ、そうです、はじめまして。」
中からここの神様が出てきた。
中からは甘いにおいがする。
プリンの匂いだ。
神様は自己紹介をした。
「私はプリンの神様だ。」

 話を聞いてみると、秋頃神社の裏にプリン専門店を作るのだそうだ。
ぼくがするのはプリンを試食してその感想を書くこと、そして友人にプリンを配って感想を聞いてくること、だそうだ。
「では、早速持ってきてくれ。」
プリンの神様は言った。
「はぁい、ただいま。」
そう言うと、ここの狛犬さんらしき人がプリンを持ってきた。
「はじめまして、プリン神官αの益田です。副業でここの狛犬もやっております。」
「え?え?え?」
よくわからない話だが、もともと狛犬で、副業でプリン神官をやっているのではないのだろう?
ぼくの混乱をよそに、プリン神官αの益田さんはお皿にプリンを盛り付ける。
「どうぞ、お召し上がりください。」
「はぁ、どうも、いただきます。」
二人に見られると何か食べにくい。
ぼくは何となく話をしてみた。
「プリン神官αってことはβもいるんですか?」
「えぇ、もともと狛犬ですから二人ひと組なんです。もっとも、もう一人は募集中ですが。」
「はぁ、そうですか。」
しゃべりながらぼくは一口プリンを食べてみる。
「こ・・・これは!!!」
美味しすぎる!!!滑らかな舌触り、甘さも控えめでヘルシーだ。
カラメルが若干苦い気もするが、それを差し引いても今まで食べた中で一番おいしいプリンだ。
ぼくは会話もそこそこに食べるのに夢中になってしまった。
「本当に食べることには必死なんだな。」
「話が続かなくなりましたね。」
プリンの神様プリン神官αが何かしゃべっていたみたいだけど食べるほうに一生懸命になってしまった。
「美味しかったです。」
ぼくはまず率直な感想を述べ、詳しい事を少しずつ話した。
「ありがとう、参考になったよ。」
プリンの神様は言った。

「では、友人や知り合いに配り、感想を聞いてきてほしい。」
帰り際、プリンを渡しながら神様は言った。
感想が聞ける上に宣伝にもなるから、ということで少しお金ももらえるそうだ。
プリン神官αがプリンを持ってきてくれる。
「では、これをお持ちください。」
プリンが5つ入っていた。
女神さまとぼくと美子とタカシくんと、あとはれんさんにあげよう。
ちょっとわくわくしながらプリンを受け取る。
「じゃぁ、失礼します。また後日、感想を持ってきます。」
そしてぼくはプリン神社をあとにした。
帰ったらまずは女神さまと美子に渡して感想を聞こう、プリンの仕事だからぼくは張り切った。


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