きっかけは、近所の小学校の運動会を見に行ったことだった。
うだるような暑さの中、ぼくと女神様と美子の三人で出かけた。
前日、美子が友人に見に来るように誘われたそうだ。
せっかくだから、とみんなで見に行くことにした。
「コマも美子も、学校を見るいい機会だしね」
女神様はそういうのだった。

もう10月だというのに残暑が厳しい。
「こんな暑さで走り回ったらみんな倒れるんじゃないの?」
ぼくは率直な感想を述べた。
女神様はあははと笑い、
「でも、子どもって意外に強いのよ」
と言うのだった。

学校に着くと、美子は珍しそうに学校を見ていた。
「あそこにお花がたくさんあるよ」
と花壇を見つけたり、すべり台に登ったり。
肝心の運動会は人が多すぎてよく見えなかった。
それでも美子は友達が出るときはきちんと見ていて手をふった。
美子は概ね満足だったようだ。

美子がそれを言い出したのは帰り道でのことだった。
「わたし、学校に行きたい」



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