あれから、随分長い月日がたった。
この間、タカシくんに会いに老人ホームに行ってきた。
「コマはいつまでも変わらないね」
そういうタカシくんは初めて会ったときより小さく見えた。

 きっと今日はいいことがある。
絶対的な予感がした。
だからぼくは朝からノリノリでケーキを買いに行った。
「美味しいものなぁんてぇ 自分で見つけるよ♪」
ちょっとノリすぎて歌まで歌ってしまった。
「もう、コマったら」
女神様は笑いながら言う。
「二人暮らしなのに5つも買ってきてどうするのよ」
「えっと…明日食べるとか」
ぼくはそう答えた。
「まぁ、たまにはいいか。
おやつで食べましょう」
「全部ですか?」
すると女神様は笑う。
「もう、すごくいきいきした顔になるんだから。
一つずつよ、もちろん」

 ぼくは冷蔵庫にケーキを入れ、境内の掃除を始める。
「まいちゃん、みさちゃん、階段気をつけて」
そんな声が階段の下から聞こえてくる。
二人の子どもを連れた若い母親だった。
目があった瞬間、若い母親は言った。
「私…この人知ってる…」
ぼくはあまりのことに声が出ない。
慌てた様子で女神様が飛び出して来た。
しかし、あわてた様子とは裏腹に、女神様は一言だけ
「お帰り」
と言うのだった。


――おしまい――


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