ぼくは一晩中眠れなかった。
なぜ女神様は生まれ変わりに賛成するのだろうか。
あのあと、女神様ともう少し話をした。
「コマの気持ちはわかるよ。
でも、美子の気持ちもわかる。
それに、美子の言っていること、つまり成長したいってことね。
それは人として当然のことだと思うの。
だから美子の気持ちを大事にしてあげたいの」
今までずっと三人で暮らしてきたし、これからもずっとそうだと思っていた。
美子の言いたいことはわかったし、女神様の言いたいこともわかった。
しかし、それは今の生活を捨ててまでやらなければいけないことなのだろうか。
ぼくには到底理解できないことだった。

 眠れないまま、起きる時間を迎える。
何となく目覚まし時計を放り投げて掃除をしようと立ち上がる。

 外はうっすら明るかった。
「朝は涼しいな」
何となく独り言をいい、掃除を始める。
「コマ兄、掃除手伝おうか?」
境内を半分もはいたころ、美子が来た。
「ん…じゃあ…」
一瞬言葉につまる。
残りはたいしたことはないのだが、断ったら怒っているみたいだろうか。
「お願いしようかな」
美子は満面の笑みになり、任せといて、と元気に飛び出してくるのだった。
「ねぇ、コマ兄」
掃除をしながら、美子は言った。
「コマ兄が納得してくれるまでは、ここにいるから」
美子は本当にいい子だと思う。
自分の希望を言っても相手のことを優先してくれる。
それに比べてぼくは…いや、よそう。
美子がずっと一緒にいるのならぼくはきっと、ずっと納得しないだろう。



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