掃除を終え、朝食の準備を始める。
珍しく女神様はまだ寝ていた。
「コマ兄、料理を教えてよ」
美子が言った。
女神様の方針で、美子は火も包丁も使わせていない。
「そうだねぇ…」
いろいろ考えた挙げ句、一つ思いついた。
「じゃ、ぼくがパンを切るからジャムとかマーガリンを塗ってくれるかな」
美子は、四等分した食パンに、それは丁寧にジャムやマーガリンを塗っていった。
ぼくはレタスとトマトを切り、その盛り付けも頼んだ。
美子は見とれるような手際の良さで野菜の盛り付けをしていった。
「まぁ、美味しそう」
目を覚ました女神様が言う。
「美子に盛り付けをお願いしました」
ぼくは報告する。
「まぁ、すごく上手ね。
それにとても美味しそう」
女神様は美子をべた褒めしている。
ぼくはちょっと嫉妬してしまう。
朝食はみんなで楽しく食べた。
まるで昨日は何もなかったかのように…
まるでいつもと変わらないように…
いつもより早く起きたからか、美子は珍しく昼寝をしている。
ぼくは今朝、美子が言ったことを女神様に伝えた。
「そっか…美子はやさしいんだ…」
女神様はそれだけ言った。
それ以上女神様は何も言わなかったのでぼくは女神様に聞いた。
「ぼくが美子とずっと一緒にいたいって、わがままなんでしょうか」
女神様は少し考えてから口を開いた。
「そうかもしれないね。
でも、それだけ美子を大事に想っているんでしょう」
ぼくは胸が苦しくなる。
「コマは本当に美子を大事にしてくれているからねぇ」
その言葉にぼくは涙が出そうになる。
女神様はさらに続けた。
「私は美子が大事だから美子の気持ちを大事にしたい。
あなたは美子が大事だから美子と一緒にいたい」
ぼくは涙を流しながら最後の質問をした。
「どうすれば美子にとって一番いい選択ができますか?」
女神様はゆっくり答えた。
「そうねぇ…多分、美子自身の選んだ道があの子にとって一番よね。
ここに来て数年、ずっと悩んでいたことだから…」
ぼくは心を決めた。