れんさんが来て数日後、近くの大きな神社の神様から電話があった。
女神様がそれを受け、内容をぼくに伝える。
「れんさんが亡くなったそうよ」
ぼくは途方にくれた。

 れんさんは近くの神社の池の主だった。
今朝、水面に浮かんでいたらしい。
ぼくはショックで座り込んだ。

 女神様は横に来てやさしくなぐさめてくれる。
この間、手をつないだことをはしゃぎながら報告し、珍しく女神様も一緒に大騒ぎになった。
この間話したのはそれだけだった。
この間言わなかったことをぽつりと言った。
「そういえば最後のお願いって言ってたもんな…」
ぼくは誰にともなくぽつりと言った。
「そう、れんさんはわかっていたんだ」
女神様はそれ以上は言わない。
だから続きはぼくがしゃべる。
「今まで、一緒に歩いていたのがデートみたいだったとか」
女神様は少し考えてから言った。
「もしかしたら、れんさんはあなたのこと好きだったのかもね」
そう言われると切なくてぼくはさらに泣いてしまう。
「きっと、あなたもれんさんに恋をしていたのよ」
ぼくはもうどうしようもなくなり女神様にしがみついて泣いた。
「初恋って実らないものよ」
そう言って女神様はぼくの頭をやさしく撫でてくれた。
ぼくたちの間にあったものがとけてなくなっていくのを感じる。
ひとしきり泣いたあと、ぼくは女神様にれんさんの最後のお願いの話をした。
「でも、ちょっと皮肉かもしれないですね、
最後のお願いが亡くなったあとにかなうなんて」
あら、と女神様は言う。
「れんさんは自分の命をかけて願いを叶えたんじゃないの。
全然皮肉なことはないよ」
言われて初めて気がついた。
そして切なくなってまた泣いた。

 明日、女神様と一緒にれんさんにお花をあげに行こう。
それがれんさんへのお礼だと思ったから。



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