今日はお花見だ。
お花見といっても、鳥居の隣に桜の木が一本あるので遠くに行くわけではないのだ。
桜の木の下でお弁当を食べ、お話をして、少しお酒も飲んだ。
「お花見、楽しいね。」
美子はすごくはしゃいでいる。
ぼくたちはすごく幸せな気分にだった。

 なんだかんだでだらだらすごしているうちに女神様のひざの上で美子は寝てしまった。
女神様はいとおしそうに美子の髪をなでている。
「幸せですねぇ・・・」
ぼくはふと言ってみた。
「えぇ、そうね。」
女神様は静かに言う。
それだけでぼくたちは満ち足りた気持ちになる。

 ふわりとそよ風が吹いた。
ぼくは目をつぶり、息を吸う。
ふわふわと桜の花びらが落ち始める。
それを見て、女神様はすっと手を伸ばした。
桜の花びらが一枚、女神様の手の上に舞い落ちた。
「ねぇ、コマ、知ってる?
落ちてくるさくらの花びらを取れたらね、幸せになれるのよ。」
「へぇ〜、そうなんですか。」
ぼくは手を伸ばしてみたが、うまく取れない。
「ん・・・難しい・・・」
それを見て女神様はくすくす笑う。
「このおまじないはね、昔ここにお参りに来た女の子が教えてくれたの。」
「そうなんだ・・・女神様は、それで幸せになれたんですか?」
ぼくは聞いてみた。
「えぇ、もちろんよ。」
女神様はそう言うと、さくらの花びらを美子の髪にそっとのせるのだった。


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