「うぅ〜ん・・・」
ぼくは思い切り息を吸い込む。
「いいにおい・・・春のにおいですね。」
「これはお日様のにおいだよね。春っていうより、初夏、かな。」
女神様が教えてくれる。
「気持ちいいね。」
美子も思い切り息を吸い込んでいたようだ。

 今日は3人でお散歩に来ている。
普段はぼく独りで行くことが多いのだが、温かくなって
「今日はすごく気持ちがいいから。」
と女神様が言って3人で行くことにしたのだ。

「たまにお散歩するのも、楽しいね。」
美子が言う。
すごく楽しそうだ。
「毎日でもついてきていいよ。」
ぼくは言った。
すると、女神様がふふふ、と笑って言う。
「コマは一時間くらいお散歩するでしょ。美子には無理だよ。」
「うぅ〜ん・・・そうかなぁ・・・」
ぼくは少し考える。
「一時間は・・・無理だねぇ・・・」
美子が結論を出すのだった。

 神社に帰って、晩御飯は外で食べた。
バーベキュー用に買ったいすとテーブルを出す。
旬の野菜をたくさん使ったサラダを作る。
「美子、トマト食べる?」
ぼくは小さな声で聞く。
「コマ兄、好き嫌いしちゃだめだよ。」
「う・・・うん・・・」
ぼくは仕方なくトマトを食べる。
ふと見ると、女神様は5月の景色を楽しんでいた。

「また、時々みんなでお散歩して、外でご飯食べようね。」
布団を敷きながら、美子が言う。
「そうだね。楽しかったね。」
「季節の感じられる日に、ね。」
ぼくは次の季節を考える。
「じゃぁ、次はみんなで大雨の中梅雨だ梅雨だとお散歩ですね。」
女神様も美子も即否定する。
「さすがに雨の中は、ねぇ・・・」
「ぬれるのは、好きじゃないなぁ」
その夜、ぼくたちは夏にしたいことを遅くまで話していた。


戻る