「うわぁ・・・相変わらず寒いね。」
ぼくは部屋に入るなり言う。
ポルターガイスト現象を止めたお礼に今日はお昼ご飯を奢ってくれるのだそうだ。
「冷房は22度にはしてるよ。」
タカシくんは言う。

 ぼくたちは近所のうどん屋に行った。
タカシくんは大盛の天ぷらうどんを、ぼくは牛丼をたのんだ。
「それにしてもすごいよなぁ・・・幽霊と話せるなんてね。」
タカシくんは言う。
「やっぱり神社に生まれるとそういうのができるようになるんだなぁ。」
ぼくに言ってるようだけど、一人で感心しているようにも聞こえる。
「ん・・・ぼくは特別なんだよ・・・」
ぼくは、タカシくんの思っているような霊感の強い人間ではない。
女神様は、機会があれば本当のことを話してもいいんじゃない、といっていた。

「特別って、修行でもしたの?」
「いや・・・そういうわけではないんだけどね・・・」
本当のことを言ったら、タカシくんはどう思うのだろう。
ぼくは、話すべきか迷った。
話さなくてもいいけど、話したほうがいいかもしれない。

「えっと・・・」
話すことにした。
帰りながら、ずっと迷っていた。
今は、タカシくんの家に戻ってきている。
「ぼくは・・・狛犬なんだよ・・・人間じゃないんだ。」
「え・・・」
タカシくんは信じられない、といった顔をしている。
「普通の人間に、あんなふうにお話はできないよ。」
ぼくは続けた。
「そっか・・・そうだよね。」
タカシくんはまだ半信半疑といった顔をしている。
タカシくんはいろいろ質問した。
ぼくの母親だと思っていた人は、神社の女神様だし、
妹だと思っていた子は迷い込んできた幽霊の子だった、という話をした。

「まぁ・・・100%信じたわけじゃないけど・・・」
タカシくんは結論を言い出した。
「どこか世間離れした感じがあったけど、そういうことだったのか。」
「まぁ、まだ人間の世界のことはいまいちわからないことが多いよ。」
「そっか・・・じゃぁ、何でも聞いてよ。俺たちは友達だからね。」
すごくうれしかった。
人間じゃないから、離れていくかもしれないと少し心配だった。
でも、すごく安心した。
「ありがとう!!またくるね。」
ぼくはその日、とても幸せな気分で家に帰った。


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