土日は、晴れたら裏のアパートの管理人さんが来る。
お賽銭を入れて、境内を掃除をして帰る。
晴れた日は必ず、だ。
女神様に聞くと、ぼくが来る前からずっとだそうだ。
今日も、境内を掃いている。

「こんにちは。いつもありがとうございます。」
なんとなく、声をかけてみる。
なぜか、気になっていた。
「おや、こんにちは。
君はよくここで見かけるが・・・」
「えっと・・・」
人間に、狛犬だの女神だの言っても信頼されない、と女神様が言っていた。
なんと答えるべきか・・・
「いつも母がお世話になっています。」
とりあえず親子ということにしておこう、と以前女神様と打ち合わせていたことを思い出した。
「そうか、神主さんの息子さんか。」
「はい。」
「で、名前は?」
「コマです。」
「は?」
「コマ・・・ですけど・・・」
「ネコみたいな名前だな・・・」
「いや・・・犬なんですけど・・・」
「・・・わけありか・・・」
そういうとしばらく考え込んで言う。
「お母さんを大事にするんだぞ。」
「えぇ、それはもちろん。」
これだけは確実にいえる。
この人はとてもいい人だと思った。

「ところで、どうしていつも掃除をしてくださるんですか?」
疑問に思っていることを聞いてみた。
「私はそこのアパートの管理人でね、うちのアパートの子どもたちがここに
よく遊びにくるみたいなんだよ。だからそのお礼にと思ってね。
今からの季節は、朝早くからカブトムシやクワガタもとりにくるから。
この神社には、ずっとお世話になっているんだよ。」
そういうと、にこやかに掃除を続ける。

次の日から、ぼくは境内の掃除を日課にした。


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