一度、みんなで外食をしてから、時々――本当に時々外食をするようになった。
女神様もぼくも美子もあまり外に出ない。
だから、外に出る機会は外食することで作る。
秋も深まってきた頃、突然女神様が言った。
「食欲の秋って言葉があるから、今日は焼肉の食べ放題ね。」
女神様は季節の行事が大好きだった。
「食っべほうだぁぁぁぁい♪」
「食っべほうだぁぁぁぁい♪」
ぼくと美子は同時に叫んだ。
「美〜味し〜♪美味し美味し美味し美味し美〜味し〜♪」
ケーキとアイスクリーム、プリンに杏仁豆腐。
テーブルの上に、これでもかというほど並べる。
「ちょ・・・コマ兄・・・焼肉は食べないの?」
「デザートは御飯の後よ。」
「え・・・?」
美子と女神様がとってきたのは、お肉と野菜ばっかりだった。
「え・・・ケーキ・・・?ケーキは?」
「だから、御飯の後よ。」
女神様にいわれる。
「えっと・・・オレンジジュース・・・とか?」
ぼくはジョッキになみなみとついで来たオレンジジュースを見る。
「・・・それ、たぶんドリンクバーね・・・」
「ドリンク場?ドリンク場って何ですか?」
「まぁ・・・仕方ないけどね・・・」
結局、ジュースのみ可、ということになった。
それから、溶ける前にアイスは食べていいといわれた。
「もう、大人の体して、子どもみたいなことするんだから。」
女神様が笑いながら言う。
「今日が、今まで一番子どもじみてるね。」
美子も言う。
「・・・そうかい?」
3杯目のオレンジジュースを飲みながら答える。
「とにかく、しっかり御飯を食べましょう。」
ぼくはお肉を焼き始める。
ぼくと美子は、お肉と御飯をたくさん、野菜も少々食べた。
女神様はほとんど野菜だった。
肉類はあまり食べないのだ。
それでも、外食は好きだった。
「パンを食べようと思ったら、もうなくなってた」
美子が言う。
せっかく取りに行ったのに残念な話だ。
「パンが無ければ、ケーキを食べればいいじゃない!!!
パンが無ければ、ケーキを食べればいいじゃなぁぁい!!!!」
ぼくはそう言ってさっき持ってきたケーキを一切れ差し出す。
「パンが無ければ、ケーキを食べればいいじゃなぁぁい!!」
「デザートは、御飯の後だよ。」
というのが美子の返事だ。
「もう、子どもみたいなんだから。」
女神様も言う。
すごくおかしそうだ。
「どこでそんな言葉を覚えたのよ?」
さらに女神様の追求だ。
「ん・・・テレビか本だったと思います。」
ぼくの情報源は主にその二つだった。
その夜、ぼくたちは大いに食べて、大いに飲んで少し騒いで楽しんだ。
周りに迷惑にならない程度に。
「コマ、ホントにケーキが好きだね。」
帰り道、女神様が言う。
「アイスもかなり食べたよね。」
美子も言う。
「たいしたこと無いですよ・・・ケーキはたった8きれ。
アイスは6杯。周りに気を遣いましたので・・・
あぁ、オレンジジュースは、多分3リットルくらいしか飲んでいませんよ。」
今日の戦果報告。
「おなか壊すよ。」
女神様は苦笑しながら言う。
「大丈夫ですよ。」
ぼくはおなかには自信があった。
「太るよ。」
今度は美子だ。
「う・・・」
こればかりは言い返せない。
「いつか、ケーキバイキングに行こうか。きっとコマなら元が取れるよ。」
女神様がおかしそうに言う。
帰り道は、ぼくの食事の話題ばかりだった。
その夜、ぼくは激しい腹痛で目を覚まし、眠れなかった。
翌日も大変なことになっていた。
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