「一人で焼き鳥屋さんでお酒飲んでみたいなぁ・・・」
なんとなく言ってみた。
興味はあったが、やってみる気はない。
本当に、ただなんとなく言ってみただけなのだ。
「ん・・・そうねぇ・・・」
女神様がそれを聞いて考え込んだ。
「門限決めてたけど、もしかしたらお友達とのみに行く機会ができるかもしれないからねぇ・・・」
かなり真剣な様子だ。
とてもじゃないけど今さら冗談です、なんていえない雰囲気。
「社会勉強のひとつよね、行ってもいいよ。」
こうしてぼくは、なんとなく言った一言から、一人で焼き鳥屋さんに行くことになった。
ぼくは焼き鳥屋さんの前で女神様に電話をかけた。
「えっと・・・今、焼き鳥屋さんの前です。」
「そう。まだ入ってないの?」
「一人じゃ入りにくくて・・・」
ぼくの声は少し小さくなった。
「勉強のひとつよ。がんばって。」
女神様は応援してくれた。
後ろで美子が何か騒いでいるのが聞こえる。
「ちょっと美子に代わるね。」
「もしもし、コマ兄、お土産買ってきてね。」
美子はすごく元気に言った。
中に入ると、少し不思議な感じだった。
証明が薄暗い。
こういう店にはじめて入るぼくには新鮮だった。
ぼくはカウンター席に座る。
店員さんが来て注文をとる。
学生さんみたいだ。
ぼくは焼酎とうずらの卵と鳥皮と豚バラとレバーを頼んだ。
周りはおっさんばかりだ。
タバコを吸いながら友達と仲良く話しているみたいだ。
ぼくは一人だけどいつもとの違いを楽しんでいる。
食べ終わって、お土産を注文する。
ぼくが食べたのと同じものを買った。
全部で1500円くらいになった。
誰かと来たわけじゃないけど、非日常がすごく楽しかった。
また来てみたいな、そう思いながら帰路に着くのだった。
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