海が見たい、ふとそう思った。
まだ春で少し寒いけど、でも見たくなった。
ぼくはなぜか海が好きだ。
特に泳ぎが得意というわけではない。
ただ、海を見つめるのが好きなのだ。
自転車で30分も行けば海が見える。
見に行こう、そう決めた。
ちょうど仕事も休みだったから。
普段乗らない自転車のほこりを払い、サドルにまたがる。
景色を見ながらゆっくりと進む。
まだ風が冷たい。
でも、それが気持ちよかった。
音楽は好きな曲ではなくラジオを聞きながら。
静かな古い音楽が流れる。
今日は風がごうごうと強い。
海に近づくと風が潮のにおいを運んでくる。
気まぐれで、いつもと少し違う道を通る。
堤防の横の道を見つけた。
海を見ながら砂浜に降りられる場所を探す。
いつもの道からは見えないようなところに階段があった。
今日はそこから砂浜に降りた。
まだ寒い時期なのに、鳥がたくさん飛んでいる。
その白い砂浜と青い海の間を、ゆっくり、ゆっくり歩いていった。
ちょうど引き潮で、遠くまで歩ける。
潮のにおいを、胸いっぱいに吸い込み、そして、ゆっくり吐き出す。
それから、周りを見渡す。
空は青くて、果てしなくて、
海は広くて、冷たくて・・・
いつか、好きな人とここを歩けたら幸せかな。
そう思いながら空を見上げた。
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