木の根元に座り、しばらく湖をながめる。
「さぁて・・・どうしようかな・・・」
帰るには、歩くしかない。
すでに廃村になっていて、バスはもうここまでは来なかった。
「困ったね。まぁ、どうにかなるか。」
オレの趣味は散歩だった。
だから歩くこと自体はたいした苦痛ではない。
しかし、何でここにいるのか・・・
さっぱりわからなかった。
「そういえば、今夜あたり満月かな・・・」
ふと、思い出す。
この湖から見る満月は、とても美しいものだった。
今までは、毎年8月の満月の夜はお祭りだった。
その日は、精霊が現れるという言い伝えを見た。
この村も、昔はそれを信じていて、一般的だったのだろうけど、
今は現れる、という言い伝え自体を知らない人がほとんどだった。
・・・いや、よそう。
もうこの村はないのだ。
自分の村の言い伝えをほとんどの人間が知らなくても、
嘆くことではない。
ふと、空を見ると、夕焼けが美しかった。
「もう、日が沈むな・・・」
今夜、ここで満月を見て帰ろう、そう思った。
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