家に帰ると、タカシくんが必死にお祈りしてた。
「神様仏様、どうかあの怪物をやっつけてください!!」
そういってはお賽銭を投げ込んでいる。
とりあえず、ここには仏様はいないし、ここの神様も出張中でちょうど今帰ったところだ。
ついでに言えばあの物の怪は火縄銃ですでに蜂の巣だ。
「タカシくん、無事に戻ったんだね。」
ぼくは後ろから声をかける。
「コマ、無事だったんだね!!」
ぼくたちはお互いの無事を喜びあう。

 二言三言タカシくんと話した後、弟が声をかけてきた。
「兄者、さっきの方か?」
「あぁ、そうだよ。」
「そうか…無事だったんだな。」
弟はしみじみと言った。
「そちらの方はさっきのもう一人かい?」
「えっと…面識ないんだっけ?ぼくの弟だよ。」
タカシくんは、なるほど、と言った顔をする。
「先ほどはどうも…」
「いえ…いつも兄がお世話になっています。」
弟は人見知りしているようだ。
「あの…お名前は…」
タカシくんは聞いた。
「えっと…」
そうだ。コイツにはまだ名前が無いのだった。
「あのね、タカシくん…」
ぼくは説明しようとした。
何と説明したらわかってくれるだろうか。
「護くんよ。」
女神様が言う。
「あなたの大事な場所も、彼の命も、あなたが護った。
だから、護くんよ。」
女神様はまっすぐ弟をみながら言う。
「ありがとうございます!!すごく気に入りました!!」
弟が今までにないくらい嬉しそうに言う。
「人間っぽくていいよね。」
ぼくは冗談半分で言った。
「あら、コマ、自分の名前嫌い?」
女神様が不思議そうに聞く。
「いえ、大好きです!!」
一番大事な人に一番最初に頂いたものだ。
嫌いな訳がない。
「そう、よかった。」
女神様がほっとしたように見える。
もしかしたら、さっきの言葉が皮肉に聞こえたのかも知れない。
ぼくは少し反省した。
タカシくんはついて行けて無かった。

「さあ、もう遅いから帰りましょう。」
女神様が言う。
時計の針はもう12時近い。」
「今度、詳しく話すね。」
ぼくはタカシくんにそう言った。
「あぁ、お願いね。それから、今日は本当にありがとう。」
タカシくんはそう言うと帰っていった。

 ぼくと弟は中に入ってまずはシャワーを浴びた。
泥だけでも落とそうということになったのだ。
「うわ…アザだらけだ」。
ぼくは自分の体を見て言う。
「オレもだ…」
弟も自分の体を見ながら言う。
「さっさと体を洗って寝よう。」
ぼくは弟に言った。
今日はいろいろあってすごく疲れた。
しかし、明日はごく普通の日常に戻る。
ぼくたちは、それがうれしかった。



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