轟音とともに藁人形が崩れ落ち、呪いは溶けるように消えていった。
「いったい何が・・・」
弟はあっけに取られている。
ぼくは音のしたほうを見た。
そこには女神様が立っていた。
隣には火縄銃を構えた美子がいた。
銃口からは、まだ煙が立ち昇っていた。
それを見て、ぼくは涙を流した。

 ぼくと弟はその場に座り込んだ。
「死ぬかと思ったよ。」
「かなり怖かった・・・」
ぼくたちは何度も死んで、そのたびに生き返っていた。
それでも死にたくはないし、慣れるものではない。
「コマくん、大丈夫?」
れんさんが走ってきた。
「あ・・・あれ?どうして?」
「泣くほど怖かったのね、かわいそうに・・・」
れんさんはぼくを小さな子どもか何かだと思っているらしい。
「お若いの、大丈夫か?」
「物の怪はどこじゃぁ!?」
近所の大きな神社の狛犬さんたちも来てくれた。

 話を聞くとどうやらタカシくんがぼくの神社に行った後、
大きいから、という理由でお祓いを頼みに行ったらしい。
「それにしても、あれだけの物の怪を二人で退治するなんてすごいじゃないか。」
「いや、結局美子が本体を火縄銃で・・・」
「なんだ、情けない。」
向こうの狛犬さんはなかなか辛辣だ。
「まぁ、無事でよかったじゃない。」
「えぇ、おかげさまで。」
弟は面識がないので黙っている。
「えっと、コイツはぼくの弟です。」
「は・・・はじめまして・・・」
すごく緊張しているようだ。

「コマ、無事だったのね!!」
「コマ兄、心配したんだよ!!」
丘から降りてきた二人は泣きながらぼくを抱きしめる。
「ご心配おかけしました。」
そういうと、ぼくも泣いてしまった。
ここがぼくの一番安心できる場所だ。
「あ・・・」
ぼくは弟のほうに手を伸ばした。
こいつには家族はいないのだ。
「お前も無事・・・だよな?」
「ん・・・あぁ、まぁな。」
「あなたも無事でよかった。」
「おにいちゃんのことも、心配してたんだよ。」
女神様も美子も、ちゃんと言ってくれる。

 大きな神社の方にお礼を言い、ぼくたちはそれぞれ帰路に着いた。
帰り道、ぼくたちはほとんどしゃべらなかった。
ぼくも弟も疲れていてぐったりしていたから。
明日からは、心配をかけた分しっかり働こう、と思った。

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