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釈 尊 フ ァ イ ブ の
お説教は言わないで

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第3話「第2種兼業信者??」

マイケル あの「Sマップ」の彼、実はS価学会なんだってさ。
ジャネット ふーん、そうなんだぁ。表立って言わないだけで、他にも結構いるのかもね。…それにしても、あんたは神も仏も信じないってわけ?
マイケル 信じないね。俺、無宗教だもん。宗教なんてウサン臭いし。
ジャネット あっそ。まぁそれはそれで、ありだわね。ところで初詣はどこに行ったの?
マイケル そりゃいつもの、光明院の隣にあるデカいほうの寺に。あっ…。
ジャネット 行ってんじゃん。じゃぁクリスマスは何してた?
マイケル クリスマスパーティを…。
ジャネット あんた、それでよく無宗教って言えるわね。
マイケル いろいろ兼ねてるんだよ。そう、俺は「第2種兼業信者」なのさ。
ジャネット それ、第2種兼業「農家」のパクリじゃないの!


 日本人の宗教観を語る上で、よく取り上げられる数字を紹介しましょう。少し古いですが、1984年にNHK放送世論調査所が行った『日本人の宗教意識』という調査です。

信仰を持っている人 信仰を持っていない人
日本人 33% 65%
アメリカ人 93% 7%

 これを見ると、日本人の大半が「信仰を持っていない」ということになり、アメリカではほとんど全員が何らかの宗教をを信仰していることになりますね。

 でも、これは額面どおり受け取ると勘違いをしてしまうのです。

 実態を比べれば、日本人もアメリカ人も、大差ないのかもしれません。アメリカだって、熱心じゃないキリスト教信者も大勢います。逆に日本人の多くは、マイケルのように初詣やクリスマスパーティをしますし、お墓参りにも行くでしょうし、無宗教で葬儀を行う人はまだまだ少ないはずです。

 ただし欧米やイスラムの場合、「私は何かを信仰している」と表明していないと、人格さえ疑われてしまいそうな社会です。逆に日本の場合、正々堂々と「私は宗教を信じている」と言うと、「この人、ちょっと変」と疑われてしまいそう。その違いがあるのかもしれません。だからこんな調査結果になるのではないでしょうか。

 よく外国の調査所が日本人にアンケートをとると、「月に1度は神社にお参りする」という人が、すぐ後の項目で「特に信仰を持っていない」に○を付けたりするので、調査員もビックリ、という話があります。信じていないようで、信じているような、そんな曖昧さが日本人の宗教観の特徴みたいですね。

 ところで、多くの日本人には、漠然とした<民俗信仰>といえるものがあります。実は、葬送儀礼や先祖崇拝、お盆やお正月などは、ほとんどが民俗信仰に基づいているのです。

 それに付け加えて、あとから仏教やキリスト教、新宗教などの教団が輸入されたり、生まれたりしました。日本では、それらを自由自在に取り入れて、融合させてきました。ある意味では、信仰の2重構造と言ってもいいでしょう。これを「多重信仰」「重層信仰」といいます。

 その結果、育まれたのが、先に述べたような曖昧な宗教観なのです。もちろん、それ自体は悪いことではないと思いますよ。しかし…。

  初詣、クリスマスなど、境界線の曖昧な宗教行事に対しては、無頓着。

  でも、「○○教団に属する」というような、境界線がはっきりする宗教活動に対しては、拒否反応を示す。

 これが一般的な日本人の宗教観だとすれば、これって、寛容なのか不寛容なのか、難しいところですね。

 私の意見では、この多重信仰をいったん解体して、自分なりに再度「選び直す」という作業が必要だと思うんです。

 ためしに、現在のような無頓着な多重信仰者を「第1種兼業信者」と名づけたとします。第1種兼業信者は、自分の宗教観に無自覚なために、他の宗教的態度に対して不寛容なことが多い。けれども今後、世界は国際化したり価値観がバラバラになったりしていくに違いありません。そこで生きていこうと思えば、他人の信仰に対して寛容であることは、不可欠です。

 そこで「第2種兼業信者」という新しいあり方を提案します。これは、それぞれの宗教行事や宗教活動の意味を知って、自覚的に多重信仰をする人のことです。そうすれば、参加する行事が以前と同じだとしても、より充実した宗教ライフを送れるのではないでしょうか。

2004年1月21日 坂田光永


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