★仏教・密教が500倍わかる★
釈 尊 フ ァ イ ブ の
第4話「仏教って何?」
マイケル 突然ですが、アナタハ、ホトケヲ、シンジマスカァ?
ジャネット なんでそこで外国人風なのよ。そうねぇ、私はどうかしら…。あんたよりは仏教には詳しいわよ。
マイケル ふーん、俺より詳しいの! それじゃ文句なし仏教徒だね。じゃぁ聞きたいんだけど、仏って、仏教の「神」みたいなもんなのかな?
ジャネット そう、御釈迦さんのことが仏で、つまり仏教の「神」みたいなものね。さぁ他に質問は?
マイケル じゃぁ、お経は誰が書いたの?
ジャネット もちろん、お経は御釈迦さんが書いたに決まってるじゃない。
マイケル 全部?
ジャネット そ、そう、全部よ(-_-;)
マイケル あんなにたくさんあるのに? しかも御釈迦さんってインドの人でしょ? 漢字で書いたの?
ジャネット …あーもう、分かったわよ! 私は仏教徒じゃないし、仏教にも詳しくありませんですっ! ごめんなさいでしたっ!
マイケル 何キレてんだよ。でも分かった。アナタハ、リッパナ、ブッキョ〜ト、デス。
ジャネット なんでよ?
マイケル 嘘を隠すのが不器用だから、「ぶきよう徒」!
ジャネット さぶっ!
ジャネットは適当なことを言っていますが、皆さんはお分かりですか?
仏とは仏教版の「神」? お経の著者は釈尊(御釈迦さん)?
実は、仏は神じゃありません。人間なんです。また、お経は釈尊の死後、弟子たちによって書かれたもので、お経の著者というのは、はっきりしないんです。
そんなこと言うと「えー、じゃぁ仏教って、何なんだよ!」って感じですよね。
これからしばらくは、「仏教って何?」という疑問に、大まかにお答えしていこうと思います。
まず、仏教がどういう歴史をたどって今に至るか、ということから見ていきましょう。そこから分かることは、「仏教とはこんなにも分裂しまくってきたのか!」ということです。その結果、いろいろなお経が生まれ、全然考え方の違ういろいろな宗派ができたんですねぇ。
仏教の歴史 “超”概略図 | |||||||||||
インド | 中国 | 朝鮮半島 | 日本 | ||||||||
BC1000頃 | ヴェーダ文献の成立(バラモン教) | ||||||||||
都市化などにより多様な自由思想家が出現 | |||||||||||
BC 463 | ガウタマ・シッダールタ(釈尊)誕生 | ||||||||||
BC 383 | 釈尊入滅(=死去) | ||||||||||
初期仏教の時代 | |||||||||||
約100年後 | 第二結集 ↓ 根本分裂(上座部/大衆部) |
||||||||||
多くの部派に分裂(部派仏教の時代) | |||||||||||
BC100〜100頃 | 上座部 スリランカ ↓ ビルマ タイ カンボジア |
大乗仏教の成立 (仏像もこの頃から) |
仏教伝来 | ||||||||
50〜200頃 | 『般若経』 | 『法華経』 | 『華厳経』 | 『無量寿経』 =浄土教 |
|||||||
150〜250頃 | ナーガールジュナ(龍樹)=中観派 | ||||||||||
400頃 | アサンガ(無着)ヴァスバンドゥ(世親)=唯識派 | 羅什らが経典翻訳 | 仏教伝来 | ||||||||
500頃 | ヒンドゥー教が仏教を圧倒 | 玄奘らが経典翻訳 | 多彩に 発展 |
仏教伝来 | |||||||
600頃 | 『大日経』『金剛頂経』=密教 | 奈良仏教興隆 | |||||||||
700頃 | インドで仏教が衰退 | 後期密教 チベットに 伝来 |
密教伝来 | 禅宗など 興隆 |
平安仏教興隆 | ||||||
900頃 | 禅宗興隆 | ||||||||||
1200頃 | インドで仏教消滅 | 禅・浄土に収斂 | 衰退 | 鎌倉仏教興隆 |
さて、上の図は、すごく複雑に見えますが、実際は紙面の都合上かなり省略しているのも事実です。もっと細かい動きがあるんですが、いちおう押さえておいていただきたいのは、「ひと口に仏教と言っても、いろいろあるんだ」ということです。
これをもう少しマジメに文章にすると、次のようになります。
――紀元前1000年頃、少しずつヴェーダ聖典が成立し、バラモン教が興った。紀元前500年頃から、インドでは徐々に都市化が進み、バラモン教にとらわれない自由思想家が登場し始める。その一人が、ガウタマ・シッダールタ(=釈尊)であった。彼の教えには多くの人が共感し、彼の教えをもとに「仏教」が興る。
しばらくは彼の教えが忠実に守られていたが、釈尊入滅から100年ほどたち、二度目に結集(けつじゅう=弟子たちが集まること)が行われたとき、戒律を重視するグループ(上座部)と、時代の変化にともなって戒律を改変しようとするグループ(大衆部)とに分裂する(根本分裂)。その後も分裂を繰り返したことから、根本分裂以前を「初期仏教」(原始仏教)、以後を「部派仏教」と呼ぶ。
上座部仏教は、スリランカに伝わり、この島を経由してビルマ、タイ、カンボジアなどに南伝していく。
一方、紀元前後になると、それまでの伝統的仏教を批判し出家・在家にかかわらず救済が得られるという仏教運動が起こる。彼らは、伝統的仏教を「小乗」と呼び、自らを「大乗」と称した。初期大乗仏教では、『般若経』『法華経』『華厳経』『無量寿経』などの代表的仏教経典が相次いで成立する。また大乗仏教では、仏像がつくられたり、釈尊以外の諸仏・諸菩薩への信仰も生まれる。
大乗仏教は、ナーガールジュナ(龍樹)が「空」の思想を体系づけた「中観」や、アサンガ(無着)やヴァスバンドゥ(世親)が深層心理を追究した「唯識」という考え方によって、大きな発展を遂げる。また紀元前後に仏教は中国に伝わったが、それはほとんどが大乗仏教であった。
しかしインドでは、次第に勢力を増したヒンドゥー教が仏教を圧倒するようになる。そのような中で、ヒンドゥー教の影響を多分に受けた仏教が成立した。これを「密教」と呼ぶ。初期密教が抱えた土着の呪文や儀式を、仏教思想のもとに体系づけ直した『大日経』『金剛頂経』によって、密教は中国や日本で隆盛を極めた。
だが密教化した仏教は、インドでは次第にヒンドゥー教に吸収されていった。1200年頃、日本で禅宗、法華、浄土教などの鎌倉仏教が興隆するのと時を同じくして、インドでの仏教は消滅するのである――。
むむむ…、初めて仏教に触れる人にとっては、何のこっちゃか分かりませんねぇ。
そこで次章から、それぞれの特徴を順を追って解説をしていきます。
2004年2月21日 坂田光永