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釈 尊 フ ァ イ ブ の
お説教は言わないで

「釈尊ファイブ」が贈るキテレツ仏教・密教解説。限定25歳未満! 25歳以上の方には刺激が強すぎる恐れがあります…

第6話「天上天下唯我独尊!」 −釈尊の生き方(2)誕生−

マイケル どけどけー、どけどけー、ひーき殺されてぇのかー、どけどけー!
ジャネット ちょっとアンタ、暴走族の格好なんかして、何のまねよ!
マイケル 俺はお釈迦さんの言葉で悟ったんだ。天上天下唯我独尊! この世に俺より尊いものなんかないってこと。この天下は俺様のもんだぜ! そこんとこ夜露死苦!
ジャネット 天上天下唯我独尊? そんなこと、お釈迦さんが言ったのかしら?
マイケル そう、お釈迦さんは生まれてすぐ東西南北に七歩ずつ歩み、右手で天を、左手で地を指して唱えなさったのさ。
ジャネット 生まれてすぐ歩いた? 唱えた? そんなの嘘に決まってるじゃない!
マイケル いいんだよ、そういう伝説なんだ。それが仏教の悟りなんだよ! 諸行無常、生きてるうちに楽しいことやっておかなくちゃね! ってことで、どけどけー!
ジャネット あーうるさい! アンタの楽しみは、私の苦しみなのよ! そんなこと言ったら私だって、お釈迦さんにならって「唯我独尊」してやるからね!
マイケル どういうことだよ?
ジャネット まずはアンタを我が家から追放してやる! お小遣いもあげないからね! とりあえず我が家では私が唯我独尊!
マイケル ちょ、ちょっと待ってくれよ〜! 家を追い出されたら、俺はどうすりゃいいんだよ!
ジャネット そうねぇ… 出家でもしたら? アハ(笑)
マイケル そんなぁ〜。ていうか、そのまんまだな(-_-;)


 「天上天下唯我独尊」(てんじょうてんがゆいがどくそん)とは、釈尊が誕生した時、四方に七歩ずつ歩み、右手で天を、左手で地を指して唱えたといわれる言葉です。その伝説の真偽の程はともかく、「宇宙の中で我より尊いものはない」という意味があるそうです。それが果たしてマイケルの言うように解釈できるのかは、これ以降の文章を読んでいただく中で、皆さんにご判断いただくことにしましょう。

 そもそも釈尊はどこで生まれたのか、ご存知ですか? そうです、インドの北、現在のネパールにある「ルンビニー」というところです。(地図は前ページを参照)

 釈尊の生年ははっきり分かっていません。紀元前556-前486年頃という説、前464-前384という説などがあります。

 生きていた時期にしてそんなんだから、誕生日もはっきりしていません。しかし、いくつかの仏典に「4月8日」という記述があるそうです。日本の「花祭り」も、それにちなんで4月8日に行われています。

 釈尊の父親は、カピラヴァストゥに城を持つシャカ族の王、シュッドーダナ。母はマーヤーといいます。ルンビニーでの出産は、マーヤーがお産のため実家に帰る途中の出来事でした。ところがマーヤーは、出産時の体への負担が原因で命を落としてしまいます。

 釈尊は王子としての豊かな暮らしを送っていましたが、幼い頃から体が弱く、どこか人知れず苦悩を抱えた少年だったようです。「王子なんだろ?悩むだなんてぜいたくな話だ」と思う人もいるでしょう。しかし、ちまたではカースト制と飢えに苦しみ、老い、病んでいる人々があふれていました。若き釈尊には、自分の享受している豊かさがどことなく刹那的に感じられたのかもしれません。

 冒頭、ジャネットがマイケルに向かって「アンタの楽しみは、私の苦しみなのよ!」と言っていますよね。自分のぜいたくな暮らしが誰かの犠牲の上に成り立っているとしたら… あるいはそんな思いもあったんじゃないかなぁ、などと私なんかは想像します。「誰かにとっての楽は、誰かにとっての苦かもしれない」という認識は仏教理解のポイントとなりますので、心に引っ掛けておいてください。

 やがて釈尊は結婚をし、ラーフラという名の男の子ももうけます。しかし苦悩は日増しに強くなっていきました。

 そしてある日、思い立って出家します。釈尊、29歳のことでした。

2004年10月21日 坂田光永


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