★仏教・密教が500倍わかる★
釈 尊 フ ァ イ ブ の
第9話「苦をありのままに認めよう」 −釈尊の教え(1)苦・集・滅・道−
ジャネット 最近、医療費は上がるし、税金も保険料も払わなきゃいけない。あ〜、もう、四苦八苦だわ。
マイケル 四苦八苦なら、まだ苦しみの数が足りないじゃん。
ジャネット そんなことないわ。私の苦しみを全部足したら、4とか8とかじゃ足りないわよっ!
マイケル んじゃ、まず四苦、つまり「生老病死」。なるほど、よく見ればだんだんフケてきたし(老)、不摂生がたたって体調もしょっちゅう悪くなるし(病)、すぐ「死ぬ〜っ」って言ってるし(死)、何より生きてるだけで辛そう(生)だ(-。-)y-゜゜゜
ジャネット 何よそれ…(-ζ-;) でもまだあるわ。例えばこの間、付き合ってた彼が海外転勤になっちゃったの。
マイケル おー、それは「愛別離苦」(あいべつりく)ですなぁ。
ジャネット じゃ、食べたかったベーグルが売り切れてたのは?
マイケル ふむふむ、「求不得苦」(ぐふとっく)です。
ジャネット あぁなんかムカついてきた。あんたの顔見てると腹が立ってきたわ!
マイケル ほほう、それは私に会いたくなくても会わざるを得ない。「怨憎会苦」(おんぞうえく)であります。
ジャネット やだやだ、結局、私の人生、苦しみばっかりじゃない!
マイケル そう、人間の生は苦しみテンコ盛りってこと! それを「五蘊盛苦」(ごうんじょうく)と名付けたり! つまり、あんたの人生、すべて苦しみってことだね。
ジャネット 私の人生、最悪ぢゃん! …で、どうすればこの苦しみは消えるの?
マイケル そうだねぇ、そこから先は… えーっと、どこに書いてるのかな…。
ジャネット あんた、どうりでおかしいと思ったら、「仏教用語辞典」なんか見ながら説教してんじゃないわよっ! 私の苦しみを分けてやる! えいっ!
マイケル …痛いっ! 苦しいっ! 真実を伝えるのは、かくも苦しいものか…。「アームロッ苦」。
ジャネット 新しく作ってんじゃないわよ!
マイケル 痛い痛いっ!
ここからは、釈尊が説いた教え、つまり釈尊の悟りの中身を、つまんでいきましょう。まずは「四諦(したい)」です。次は「八正道」、そして「縁起」「中道」と発展していきます。
うわーっ、出ました、漢字ばっかり。これだから仏教は面倒だ、そう感じていらっしゃる人は多いでしょうね。
こういう用語は、実は後から弟子たちが名付けたものが多いので、無理して覚える必要はありません。覚えたところで役に立たなければ意味がない。むしろ、マイケルみたいに自分流の名前をつけてみるのも楽しいかもしれませんね。
さてさて、今回は「四諦」ということです。4つの「諦」(あきらめ)。さて、どういうことでしょうね。
まず、「あきらめ」とは、断念するという意味の「あきらめ」とは少し違います。どちらかというと「明らめ」ですね。
あー、なんかムカつく! でもそれが何か分からない、どうすりゃいいの! そんなモヤモヤの状態を「無明」(むみょう)と言います。真っ暗闇です。しかし心落ち着けて冷静に物事を見ていけば、見えなかったものが、見えるようになってくる、つまり「明らめ」てきます。無明が消えた、すなわち苦を克服した、ということです。そのプロセスを、「四諦」と名付けたわけです。
四諦とは、具体的には「苦・集・滅・道」の4つのプロセスです。
(1)苦諦 … 現状の把握(この苦しみをありのままに認めよう)
(2)集諦(じったい) … 原因の特定(この苦しみはどうやって発生したのか)
(3)滅諦 … 原因の除去(原因を取り除けば解決するってことだ)
(4)道諦 … 除去の実行(じゃぁそのための実践をしよう)
ご覧のとおり、とっても簡潔なプロセスですね。そもそもこれは、釈尊以前から伝わるインド医学の考え方のようです(ドイツ人仏教学者ベックの説)。
では、これを実践すれば、苦しみは消えるんでしょうか?
そうではありません。苦しみから永久に逃れられるなんてことはありません。
こう言うと、それって詐欺じゃないか、と思うかもしれません。けれども、苦しみを一つ一つ克服しながら人は成長していくと言えます。「なんかムカつく!」という経験も、決して無駄ではないでしょう。
まずは「これって苦かも?」とありのまま認めること! そこから始めようというのが、四諦の考え方です。そして行き着いた「道諦」(実践法)が、次に紹介する「八正道」なのです。
2005年1月21日 坂田光永