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釈 尊 フ ァ イ ブ の
お説教は言わないで

「釈尊ファイブ」が贈るキテレツ仏教・密教解説。限定25歳未満! 25歳以上の方には刺激が強すぎる恐れがあります…

第21話「インド発、中華風」 −中国仏教と訳経僧−

マイケル 仏教はインドで生まれたのに、なんでお経は漢字ばっかりなんだ?
ジャネット そりゃ、中国の人が翻訳したからよ。
マイケル それじゃ、お経ってのは、中国人のアレンジが加わってるってこと? インド発、中華風ってことだね。カレー味のラーメンか…。あ、もしかして、カレーヌードルのことだね! なるほど!
ジャネット ワケわかんないこと言って、ひとりで納得しないの! …でも、中国の人に理解しやすいように、多少ニュアンスが変わってるのは確かなんじゃない?
マイケル 言葉が変われば意味が変わるのは仕方ないね。標準語が関西弁になるときもそうだよ。関西人に理解しやすいように意訳されるものさ。
ジャネット さすがに、それはないでしょ。
マイケル そうかな? ここに「2008年三大ニュース」があるけど、読んでみて。関西風に「意訳」するから。

ジャネット
 えっと、三大ニュース、まずは「振り込め詐欺が多発、高額を詐取」。
マイケル それはこうだ。「振り込め詐欺、もうかりまっか? ぼちぼちでんな〜」。
ジャネット 必要ないでしょ、そんな意訳!
マイケル はい、次。
ジャネット はぁ、じゃ、次は金融危機ね。「ニューヨークに麻生首相やブッシュ大統領らが集まり、会談をおこなう」。
マイケル それはこうだ。「通天閣に萬田銀次郎や灰原達之が寄って、しゃべくった」。
ジャネット それって、ミナミの帝王とナニワ金融道の主人公のこと? 「金融」のスケールが違うわよ!
マイケル じゃ3つ目。
ジャネット はいはい、「巨人がリーグ優勝。西武との日本シリーズに臨む」。
マイケル 「阪神がリーグ優勝や。近鉄との日本シリーズに臨みまっせ〜」。
ジャネット もはや幻覚よっ! いいかげんにしなさい!

 仏教は、インドで生まれ、中国を経て、日本へ入ってきました。つまり、日本に入ってきた仏教は、中国の人々によって「中国化」された仏教です。あるいは浄土教や禅のように、中国発祥の仏教もあります。

 中国に仏教が伝来してきたのは、およそ1世紀だったといわれています。インドの言葉(サンスクリット語など)で書かれていた経典は、当然、中国語(漢語)に翻訳されました。その際、どうしても中国の人に伝わりやすいような言葉が用いられますよね。仏教漢語の中には、中国の民衆信仰と深く結びついた道教の用語が多く援用されているようです。

 代表的な訳経僧に、鳩摩羅什くまらじゅう)と玄奘げんじょう)がいます。

 鳩摩羅什は、350年、クチャ王国(現在の中華人民共和国・新疆ウイグル自治区付近)に生まれました。時は五胡十六国時代。戦乱に次ぐ戦乱の世で、人心は荒廃していました。そこに彼の僧侶としての名声が広まっていきます。そして32歳のとき、前秦という国の王が、七万という大軍を率いてクチャに攻め込んできました。要求は、なんと「鳩摩羅什をわたせ!」。これを断ったクチャ王は殺され、鳩摩羅什は捕えられます。このとき、なんと無理やり妻をめとらせられ、還俗させられたといいます。しかし、その後すぐに前秦は滅び、紆余曲折あって長安にたどりついたころには52歳になっていました。59歳で逝去するまで、『般若経』『阿弥陀経』『法華経』『維摩経』などを訳しました。

 玄奘は、皆さんもご存じ『西遊記』の三蔵法師のモデルです。当時のの国禁を破って天竺(インド)に行き、後に『大唐西域記』を書きました。『大般若経』600巻をはじめ、膨大なサンスクリット語経典を翻訳しました。ちなみに三蔵とは、経・律・論に精通した僧侶のことで、別に玄奘とは限りませんが、やはり三蔵法師といえば玄奘三蔵のことを指すことが多いみたいです。

 2人を比べると、どちらかというと鳩摩羅什のほうが、彼独自の解釈を盛り込んでいるといわれていますが、どちらにしても中国人に理解しやすいように「意訳」してあるわけで、そこを踏まえて読む必要があるでしょうね。

 また、仏教語の中には、意訳ではなく、インドの言葉の発音に似た漢字をただ当てはめた(音写した)ものもあります。例えば…

サンスクリット語 漢語 意味 備考
ブッダ 仏陀(ぶっだ 目覚めた人、悟った人
プラジュニャーパーラミター 般若波羅蜜多(はんにゃはらみった 仏の智慧
ニルバーナ 涅槃(ねはん 心安らかな状態、悟った状態
ヴァイローチャナ 毘盧遮那(びるしゃな 毘盧遮那如来 マハーヴァイローチャナは大日如来
アミターバ 阿弥陀(あみだ 無量寿・無量光明 阿弥陀如来
マンジュシュリー 文殊師利(もんじゅしり 文殊菩薩
サンガ 僧伽(さんが 僧の集まる場所 ここから仏教修行者を「僧」というようになる
カシャーヤ 袈裟(けさ 僧侶がまとっている布
ダーナ 檀那(だんな 布施
マンダラ 曼荼羅(まんだら 円形
ストゥーパ 卒塔婆(そとば 塔婆、塔


 日本では「だんな」は普段から使いますね。あれは実はインドの言葉「ダーナ」からきているです。しかも、骨髄バンクなどの「ドナー」という英語も、「ダーナ」と語源を共にしています。というのは、インドと英語は「インド=ヨーロッパ語族」として親戚関係にあるからなのです。

 インドの言葉は、意外なところで大陸の東西をつないでいるのですね。

2008年11月21日 坂田光永


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