「ちょっと・・・あれ本物じゃない?」
「なんかうにうに動いてるけど・・・うわ・・・なんだろ?」
「やばいよ、戻ろう?」
「せっかくだから確かめようぜ・・・たぶんお化けじゃないよ。」
二人は実体化した呪いに近付いた。
それを待っていたかのように呪いは触手のようなものを伸ばした。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
ぼくは爪でその触手を切り落とす。
「間に合った・・・タカシくん、早く逃げて!!」
「な!?狼男だぁ!!」
確かにぼくの顔は犬のようになっている。
だが、説明している暇はない。
「早く逃げて!!ここにいたら殺される!!」
ぼくはタカシくんのほうを見た。
「・・・もしかして・・・コマ?」
「そうだよ。急いで!!」
「兄者、余所見をするな!!」
振り向くと、弟が次の触手を切り落としていた。
「すまない、今行く。」
ぼくは弟のところへ行った。
「せっかく作戦を立てたのに・・・馬鹿兄者!!」
「女神様が言ってた、目の前で人が殺されるのを黙って見ていてはいけない!!」
呪いは動きが激しくなっている。
いつ暴れだしてもおかしくない状態だ。
「逃げるか?」
「いや、もう無理だろうな。」
弟も臨戦態勢だ。
「これを飲め。お守り代わりだ。」
ぼくはたまたま今朝汲んできた近所の神社のご神水を弟に渡す。
「おい、これはかけたほうが効果的じゃないのか?」
弟はふたを開け、思い切り水をかける。
ぶぉぉぉ、とよくわからない声を発して呪いは苦しみだした。
ご神水のかかった部分が溶け出している。
「あ・・・ホントだ。」
ぼくは自分の分のご神水もかけた。
それだけでずいぶん弱ったようだ。
「これで勝てるかどうかは五分五分といったところだな。」
「おい、あれ・・・」
溶けた体の一部から釘でハリネズミのようになった藁人形が見えた。
「あれが本体だな、あれを破壊できれば倒せる。」
勝てないはずだった戦いが、偶然が重なり勝機が見えてきた。
「よぉし、行くぞ!!」
「おう!!」
ぼくたちは呪いに向かって走り出した。
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