卵が 生鮮食料品の一つである事を 実感させられたのは、近所にある養鶏場が 道路縁に 一回 200円の 卵の自動販売機を 六機ほど ずらりと並べて、その自販機の上に 簡便ではあるが かなり大きな陽射し避けの屋根を付けて お店を開いて、朝 9時半と午後 1時半の一日2回 卵の小売販売を始めてからです。
それは、およそ十年位前の話ですが、初めは ものめずらしいのと そのお店に隣接してあった 30m×100mくらいの周囲を網で囲ったミカン畑に放し飼いされていた100羽ほどの鶏の 産みたての卵が 道路からも畑のアチコチに見かける事ができて、その卵が欲しくて、一週間に一度、朝 9時半から行列に並んで、2P(16個)の “放牧卵” を 結構うやうやしく 手に入れたのでした。
初めの内は、単に 新鮮な卵を食べているという、言わば 知識だけの満足感と言ってもよいものでしたが、段々と 学習効果が 脳に堆積されてきて、その内 どうも日頃食べている卵が “おいしい” 卵であることが実感されてきます。 特に、午前 9時半に 手に入れた卵を、お昼ご飯に 卵かけご飯にして食べてみると、“やっぱり違う” とつぶやいてしまいます。 子供の頃、庭先にあった 鶏小屋から取ってきた卵で食べた卵かけご飯の おいしさの記憶には かないませんが、とてもとても 捨てた味ではないのです。
それから十年近くも食べ続けると、春と秋の 寒さ暑さが ひどくない時期が、卵の味にも どことなく張りがある事が判ります。 鶏も、寒さと暑さには 影響されるようです。
ところが ここ 2〜3年、鳥インフルエンザ騒ぎで 放牧が出来なくなって “放牧卵” も消えてしまいましたが、それに替わる様に 『アローカナ卵』 という 殻が薄緑色をした卵が現われました。 色が色ですから、初め店頭に並んだ時には 躊躇していましたが、店主さんから 「美味しいですから、食べてみて下さい」 と奨められて、食べてみると これがおいしいのです。 普通の 白色や 薄茶色の卵に比べて、いくらか烏骨鶏に近い 濃密な味がします。
それで、今は もっぱら 『アローカナ卵』 に拘って買っています。 原則、卵を買った翌日の朝ごはんは、卵かけご飯を食べます。 理想は 買ったその日の 昼ご飯なのですが、気分の問題もありますので、我が家では 卵は 朝に食べる習慣になっています。
卵が新鮮でないと、卵かけご飯を食べようか という気持ちには 中々 ならないものだと思いますが、卵と 殆んど同じくらいの比重で、炊き立ての美味しいご飯と、美味しいしょう油が、卵かけご飯の “おいしい” 条件になります。
美味しいご飯は、拘ればいくらでも拘る事柄があって、一朝一夕には 満足する出来映えのものは出てきません。 おしょう油は 自宅では作らないものですから、創意工夫というよりは、“下手な鉄砲も 数打ちゃ当たる” 式の 幸運を待つしかありません。
我が家では、ここ10年くらい 新潟市に在る蔵の しょう油に出合って、大いに満足していましたが、売れなかったのか?!、あるいは後継者がいなかったのか?!、二年ほど前に 生産が中止になってしまいました。
私は、ほんとに しょう油が好きなので、ほんとに 落胆して、“あぁ、又、日本から 一つ文化が消えた” と嘆いている最中です。
それからは、雑誌などの しょう油の紹介が 目に留まると、家内に頼んで、パソコンの宅配便を註文してもらっていますが、いまだ<幸運>は 訪れてくれません。
「求めよ、さらば与えられん」 と粘り勝つつもりでは いるのですが。
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