今は、もう失くしてしまっているので、私の記憶に頼る他はないのですが、1964年4月号の 『芸術新潮』 に 「ダリの採点」 と題する紹介記事が掲載されました。 それは、当時、現代絵画の寵児の一人であったダリが、ヨーロッパ絵画の歴史的巨匠達を自分の<好み>で<裁定>してみせた興味津々の読み物でした。 その時の私には、そのダリの<見識>に妥当性があるのかどうか判定する能力が有りませんでしたが、フェルメールとかブークローとか、聞いた事のない画家の名前があがっていて、特に、フェルメールという未知の画家に破格の高得点が与えられている事に驚いて、その号で紹介されていた 「音楽のレッスン」 というカラー印刷を切り抜いて、その後10年位大事に持っていたのでした。
ところが今月号(2004年3月号)の 『美術の窓』 のダリの特集に、その採点表が<簡単に>紹介されていました。 “1600円は高いなぁ”・・と思いながらも、その1ページのために買い求めました。 改めて<点検>をしてみて、悪くない<趣味>と思いました。 フェルメールを別にすると、あと、ヴェラスケスとラファエロが高得点です。 採点は次の九つの項目 「技術」 「霊感」 「色彩」 「主題」 「天才」 「構成」 「独創性」 「神秘性」 「真実性」 からなっています。 私には 「霊感」 と 「天才」 と 「独創性」 がどう違うのか不明ですが、項目の分類は、誰がやっても納得のいくものにはならないでしょう。 私の今の興味からいえば 「霊感」 を一番注目したいところです。
私の実感では<再現>の絵画の出来栄えは、とどのつまりは<輪郭線>の表情づけの<完璧さ加減>に尽きると考えています。 我が家の壁に貼ってあるフェルメールの 「牛乳を注ぐ女」 とヴェラスケスの 「水売りの男」 のポスターの<輪郭線>は精妙を極めていて、“そう思い、決めて視ない限りは” 現実の輪郭は<その様>には視えないだろうと思わせる<処理>がなされています。 その<処理>に名詞を与えるとすれば 「霊感」 がよいのかなと考えています。
ちなみに 「霊感」 の項目で20点満点の満点を貰っているのはフェルメールだけです。
私の絵が行き詰った時には、フェルメールやヴェラスケスの 「霊感」 を勉強する事にしています。
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