時計修理みて


時計の修理は、どこに出せばいいか?どこに出せば上手に直してもらえるか?そんなことは、電話帳や店構えなどでは、なかなか判りません。
メーカー修理に出せばほぼ間違いなく上手に直してもらえます。金額は、高めですが、隅々まできれいにしてくれて、保障もあります。
ただ、メーカー修理は、部分修理、とても古い時計、部品供給が終了した時計などは、見てくれません。作業にかかる時間や金額、対リスクをよく考えています。

当店は、技術が特別に優れていることはありません。なんでも直りません((^^♪)金額も超特別安くありません。(安いほうですが)

しかしながら、当店のセールスポイントは、部分修理でも受け付ける、古い時計でも、部品がなくてもなんとか直したいという要望に、(たぶん)お応えできることです。
技術の面ですが、お客様に判断いただくのが正しいのですが、クレームもほとんどなく、再修理も月に1件程度です。

平成26年10月の作業

古い懐中時計をお預かりすると、穴石が割れたり、ヒビが入っているものが多くあります。昔の穴石が割れやすかったか、大きく重い懐中時計のため、力が強く掛るためだと思います。

さて、穴石を外す前に、穴石の直径と穴径を測定します。
直径1.3ミリ
穴径0.22ミリ
当店では、懐中時計の修理は少ないです。穴石もいくつか揃えていますが、このサイズにピッタリ合う穴石は、見つかりませんでした。

そこで、東京のi材料店に電話してみました。

私「あのー 穴石を探しているのですが、直径1.3ミリ穴径0.22ミリです。」

i材料店「えーっと、アメリカ系のアンクルあたりですか?」

すごぃ

エルジン(アメリカ製)です。

穴石はありませんでした。
伏せこみの穴石を叩いて出し(粉々です)、石が入手できないので、埋金?という方法(真鍮のブッシュ入れる)にしました。

厚みがとても薄く、通常のコレットチャックでは掴めませんので、ブッシュ専用チャックで加工していきます。
伏せこみ、アンクルの上下あがき、ガタなど動作を確認します。
無事、完了しました。

この時代の時計は、ネジ以外のパーツ1つ1つにシリアル番号(製造番号)がふられています。(ウラに数字が彫られています)

メーカーには、その番号に対応した製造年式、が記録されているそうです。
拡大写真です。

100年前の懐中時計ですが、とても手の込んだ作りですね。

アンティークは、全ての歯車の磨耗、ゼンマイの弱りで、なかなか実用的に使える時計にするのは難しいです。傷み、磨耗の激しい時計は、ウオッチメーカーさんのいる時計修理専門店を紹介しますので、お気軽にお問い合わせください。

古い懐中、腕時計の修理は、1ヶ月半お預かりします。

平成26年7月の作業

岐阜県岐阜市のM様からメールによるご依頼です。

お母様の形見のオメガの時計で、メーカーや他のお店で修理を断られたというです。

さっそくですが、完成写真です。(撮り忘れました汗)

通常この時計には、竜頭はありません。竜頭の場所にプッシュボタンがついていて、ボタン長押しで時間が早送りできます。
写真のオメガのクオーツムーブメントは、直らない事で有名です。私もこのムーブメントを見て、「直りません」と判断しました。

通常のクオーツ腕時計は、ステップモーターが180度ずつ回転していますが、こちらの時計は、細かく回転します。回路の寿命か、コイルの漏電かわかりませんが、どこの時計屋さんでも直りません。

ただし、最後の手段として、「ムーブメント交換」を提案しました。

ムーブメントを全く違うものに入れ替える方法です。
ムーブメント交換には、リスクがあります。

1、文字盤が固定できない可能性あり
  (文字盤足の位置が違うため)

2、時計ケースの中で動く可能性あり
  (ムーブメントの大きさが違うため)

3、純正の針が合わない可能性あり

4、ムーブメントにシリアル番号がふってあるため、メーカーで受け付けてもらえない
  (これは、もうすでに修理受付不可なので、OK)

画像は、プッシュボタン部を外し、竜芯を通すため、ダイヤモンドカッターで切り込みを入れたところ。
上記のリスクがありますが、なんとオメガと同じグループのETA2針ムーブメントがピッタリ合いました。

元々、日本製と違って、スイス製の時計は、長く使えるように考えて設計されています。20年まえ、30年前のクオーツの回路を新型にして、提供してくれます。日本製では考えられません。

こちらの時計はたまたまサイズがピッタリ合っただけかもしれませんが、サイズ、文字盤足の位置、針の取り付け太さなどに共通規格があると感じました。

針も文字盤も固定でき、実用に耐える時計に仕上がりました。


2級時計修理技能士

平成24年の2月に試験を受けまして、合格しました。2級の試験内容は、学科と実技(クオーツ3針のOH)です。岡山県では実施されていないので、大阪で受けさせていただきました。大阪の組合の方には、大変、お世話になりました。(基本は、各都道府県が行う試験です)
よく2級は簡単、簡単と言われますが、100点をとるのは難しいと思います。

期待の松井一郎府知事です。

平成26年2月

時計修理技能検定1級を受けてきました。2級の時から写真の作業台を持ち込んでいます。ホームセンターで購入した化粧板をカットしてもらい、木ネジで留めただけの簡単な物です。
今思えば、横幅は半分で十分でした。大きく重いため持ち込みが大変でしたが、低い長机(会議机)の上に乗せ、自宅の作業机と同じ高さで作業できるため、落ち着きます。
部品が飛んでも大丈夫なように囲みを高く作りましたが、飛ぶことはありませんでした。手前はヒジ置きです。

大阪の試験会場では、受験者の半数は受かっているようでした。
平成26年1月の作業

エルプリメロを3つも預かりました。焼きの入ったバネが多く使われていたり、出車があったり、緊張する作業ですが、どれも無事にオーバーホールを終えました。

新しいムーブメントに見えますが、設計は、手巻きの時代です。手巻き機構の部品が大きく(何か)安心です。


平成24年12月30日の作業

長らくお預かりしていた「自動車用時計」の修理です。

天真が折れていましたが、振り座が溶接で付いているようでしたので、入れホゾをしました。(人生初)

慎重に慎重に慎重に

1、まず、折れていない側の天真の長さ、太さをマイクロメーターで測定してメモします。

2、上ホゾの次の軸(逆テーパー部と本に書いてあります)の太さの穴を開けます(0.6ミリ)
このドリルの刃は超硬ですが、簡単に折れるため、中に折れ込んでは復旧できなくなるため、神経質にゆっくり掘り進みます。(冷や汗)

3、大体、直径の2倍堀り、次に0.6ミリの材料を削りだし、中に叩いて入れます。(ぴったりに出来るまで、3本作りました)
4、すでに写真では完成しています。全部で5時間近くかかりました。

一度でもチャックから天真を外すと再度、天真をチャックし削ろうとしても精密旋盤ですが、振れますので、一発で完璧なサイズにする必要があります。


ベテランの時計士なら、20分くらいで出来ると思います。
天真のサイズは、マイクロメーターで測定しますが、測定誤差もありますので、写真下のホゾサンプルをテンプ穴石に入れ、実測します。
また、加工中の天真は、写真中ほどのホゾゲージで、仕上がり具合をチェックします。0.16ミリでした。

0.16ミリあたりでは、12倍ルーペの限界でした。バイトが何処に当たっているか判らなくなります。

髪の毛の太さよりまだ太いです。修行が必要です。

無事、機械も動き、よい年が越せそうです。




過去に修理した時計の感想です。

ロレックスの機械(cal.3135)

高級機械式時計の中で一番多い修理です。年に50個ほど修理が来ます。
ロレックスは、嫌いな方も多いですが、修理する側から見るととてもよい時計です。よい点をいくつか挙げると、●すべての部品が大きい(耐久性がある)●分解、組み立てやすい構造●防水が良くサビによる故障が少ないなど。
あえてよくない点を挙げると、●機械が大きくデザインに自由度がない●最近、高いです。

セイコーは、いくら高い時計でも部品保有は、10年です。ロレックスは、最低20年、もっと古くても修理を受け付けてくれる場合があります。
ロレックスのデイトナ(cal.4030)

ゼニスのエルプリメロを改良した機械です。年に1個ほど修理が来ます。

ストップウオッチ機構付きですので、複雑で繊細です。でも、ブランパン、オーディマピゲなどの機械と比べると、部品も大きく、構造もわかりやすいです。よい点、●ほどほどに部品が大きい●ほどほどに分解、組み立てやすい構造●
よくない点、●部品が入手しにくい●高いです。
オメガの最新クロノグラフ(cal.3303)

新しい機械です。年に1個ほど修理が来ます。

ストップウオッチ機構が付きながら、薄型に仕上げています。よい点、●ほどほどに部品が大きい
よくない点、●組み立てにくい●故障箇所がわかりにくい
作業(平成23年7月)

ロレックスのレディースムーヴメント2235のオシドリのピンが折れていましたので、旋盤にて製作してみました。
旋盤で部品を作るのは初めてでしたが、うまく出来ました。
0.3ミリまでの部品は、比較的簡単に作れましたがそれより小さくなると作業が極端に難しくなります。(簡単に折れます)
修行が必要です。(息子)
ロレックスのデイデイト(cal.3055)

ロレックスの金無垢高級モデルなどが使用している機械です。デイトジャストの機械(cal.3035)に曜日の機構を乗せています。
平成23年6月に2つも預かりました。

よい時計を修理させていただきありがたいことです。
セイコーのcal.8L21

セイコーの自動巻き、8L21です。

(分解掃除前の写真ですので汚れていますが、もちろん、ピカピカに洗浄しました)
グラドセイコーなどに使用されている機械で、なかなかよい作りでした。(受け、ネジ、部品が大きく、耐久性がありそうです。)

ロレックステンプ受け石高さ調整

ロレックスのムーヴメント1570のテンプ受け石がオモテ裏逆に入っているので?と思ったらテンプの上下アガキが大きかったので、前修理した人が逆に入れていました。天真が磨耗したときの昔の人のワザです。当店では穴石調整器がありますので、地板のブッシュ(穴石、受け石セット)を調整しました。こんな調整がしっかりできるように作られたロレックスはすごいです。この道具では0.01ミリ単位で調整できるようですが、実際は、感覚です。
巻き芯別作

まだ巻き芯は、作ったことがありませんが(息子)、巻き芯欠損のインターナショナルが来ましたので、巻き芯を作成しました。
古い時計店には、左のように巻き芯が山のようにあります。この中から、角のサイズ、角の長さを見ながら候補を選びます。


そして、ちょっと芯が太かったので、旋盤で軽く削りました。候補探しから旋盤作業まで、トータル30分もかかりませんでした。また、腕が上がりました。(^^♪
(おやじいわく→腕が上がったうちに入らない)
機械台(ムーヴメントホルダー)
専用の機械台があるのと無いのでは、作業のしやすさが違います。左は、オメガのスピードマスターのムーブメント1140ですが、秒芯取り付け部に歯車を押し込む必要がありますが、この台のしたに高さ調整が出来る支えが出ているので、強く押し込んでも、穴石や受けをいためる心配がありません。
クオーツテスター
お恥ずかしいながら、クオーツ時計の論理緩急式(ろんりかんきゅうしき)というものをよく知りませんでした。時間の進み遅れをICが自動で調節してくれるという仕組みで、今売られているほとんどのクオーツがこのタイプ(のはず)です。
例にあげますと、1秒から59秒までは+0.1秒/日で動き、最後の1秒に−5.9秒/日で動き、調整します。
ですから、60秒測定しないと日差は、わかりません。
ピン作成(12倍ルーペの画像)
オメガスピードマスターの2892ムーブメントの自動巻きの歯車のピンが磨耗で1/3くらいに細くなりガタがありましたのでピンの打ち換え作業を行いました。作業後の写真です。
直径が0.3ミリ、長さ1ミリのピンを作成しましたが、ピンセットから落ちるとどこに行ったかわからなくなる大きさです。
ピンの試作品。
なぜ、こんなに磨耗があったのかお客様にお尋ねすると、ワインディングマシーンを使っていたそうです。たまにしか使わない時計はワインディングマシーンに入れると腕に付けて毎日使用している以上に時計を使用している状態ですので、OHをまめにしないと磨耗の原因になります。

この作業は、修理中に発見しましたので、追加料金なしです。(見積もり時に発見できませんでしたので)




続く・・・

写真で紹介


時計修理工具は、こちらです。


機械式掛け時計の調子が悪くなる原因は、こちらです。


機械式掛け時計の修理の様子を写真で紹介しています。


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