仏教と現代
11月9日、衆議院選挙の投票日でした。
投票率が恐ろしく低くて、私もいろんな人から「若い人が投票に行かなきゃダメよ」と言われました(うう、行ったのにぃ〜)。
私は選挙のとき、投票率をもっと重視すべきだと思っています。投票率が低ければ、それは出来レースになりやすい。組織票が力を持つからです。逆に投票率が高ければ、組織に左右されない「一般の人々」の感覚が選挙結果に反映されます。
それだけじゃありません。投票率が高ければ高いほど、議員は「一般の人々」の声に耳を傾けるようになるはずです。「一般の人々」がたくさん投票に来るとなれば、次の選挙に勝つためには、彼らの意志を知らなければならないからです。
「一般の人々」の意志を反映する仕組みが選挙であり(というより選挙以外に意思を反映しようがないのが「一般の人々」といってもいいかもしれません)、それが民主主義であるわけですよね。
しかし現代民主主義は、低投票率の憂き目に会って瀕死の重症といったところでしょうか。だから、何となく政治家の言葉は、「一般の人々」の感覚から離れたものになっているでしょう。
1200年前、弘法大師空海へ真言密教の秘法を伝授した恵果(けいか)阿闍梨は、この「一般の人々のために」ということを強く強く言い残します。
いま伝授は終わった。
早く故郷に帰って、国に仕え、この真言密教を天下に流布して、
一般の人々の幸福を増すために働きなさい。
「蒼生の福を増せ」。恵果が空海へ与えた最大のミッションが、これなんです。
恵果は燃え尽きようとしている自分の命を振り絞り、すべてを空海に伝授します。インド伝来の真言密教も、もはや恵果の暮らす中国では衰えつつあった。自分の受け継いだ法の灯火を絶やさぬよう、せめて異国の地で…。伝授の終わりを遂げて間もなく、恵果は息をひきとるのでした。
目立たず、花も付けない、ときには国境も越えて蒼く生え広がる雑草のような「一般の人々」を見つめ続けた恵果。彼の遺志を継いだ空海は帰国後、学校の設立や満濃池の修築などを通じて、蒼生の福のために大きな足跡を残すのでした。
さあ、それでは私から、当選された衆議院議員の皆さんにミッションです。
――ソウセイノ サイワイヲ マセ。
2003年11月21日 坂田 光永
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