仏 教 と現 代

光明院の歴史

 仏教×数学講座の「夏期講座」として福山城について学ぶことになり、ゲスト講師の先生と打ち合わせをする中で、わが光明院の歴史についていろいろと教えていただく機会を得ました。

 光明院の「縁起」(ゆかり)についてはこのホームページの「場所 縁起」のページに載せてありますが、私自身これ以上のことは先代から聞くこともなく、内容もふわっとしていたので、いつか詳しく調べてみたいと思っていたところでした。

 先生が示してくれたのは『水野記』『備陽六郡志』の2つの史料の記述です。

 まず、水野家の故君を旧臣が顕彰した『水野記』には、「深津郡深津村 真言宗」の寺院として、「松林山長尾寺」「無量寿山光明寺」「大地山薬師寺福正院」「長尾山千手院観音寺」の4ヶ寺が載っているそうです。「大地山」は「王子山」の書き間違いか? 観音寺は現在の北吉津町の観音寺さんと関係があるのか? いろいろと気になるところですが、「無量寿山光明寺」については「深津村」「真言宗」の項にあるので、おそらく寺町の光明寺(浄土真宗)ではなく、うちの「光明院」のことかと思われます。

 その「無量寿山光明寺」の説明としては、「本尊阿弥陀、鎮守荒神、古来寺領拾貫有之、毛利取放之」と書かれています。本尊が阿弥陀如来なのは今も同じですが、鎮守は塩崎明神ではなく荒神となっています。

 次に『備陽六郡志』を見ると、「真言宗 遍照山 無量寺 光明院」となっており、ほぼ今の山号・院号で載っています。寺号は普段用いませんが、これでおそらく「無量寺」であることが分かります。続く解説には、

 開山時代共二不知
 正保以前は九尺貳間の庵室なり。此所新涯なりて汐崎明神の別當に被仰付、宗休公御建立被成ける也。汐崎の祭禮九月廿八日なり
 神輿を門内に昇いれ魚味を備ふ。仍之此日寺内の奴僕、魚鳥を喰する事を免す。
 當寺中興五世惠光法印 始名快山 當國岩成村の産也。杉原の末葉にて杉原播摩守盛重の守本奪の千手觀音を持來し安置す。

とあります。汐崎(=塩崎)神社の別当寺であることが書かれているので、比較的正確かと思われます。正保以前は「庵室」だったと書かれていますので、もともと小さな阿弥陀堂のような寺だったのかもしれません。塩崎神社の祭礼の際、お寺なのに魚や鳥を食べることを許されたという話はなかなか面白いですね。当時からうちは「生臭坊主」だったのでしょうか。

 光明院とはどんなお寺なのか、これからどうなっていくのがよいのかを考えるうえで、歴史はとても多くの示唆を与えてくれます。史料からは、光明院がどこにでもある真言宗の寺院ではなく、この福山で、深津で根付き受け継がれてきたお寺であることを感じます。

 福山城のほうは、2022年の福山城築城400年記念を盛り上げようとする一方、福山駅北口にホテル建設を進めて福山城を見えなくしようとしており、福山市行政のやろうとすることは相変わらず訳が分かりません。日本史を好き勝手に解釈した通史風の本もよく売れているようです。一口に「歴史から学ぶ」と言っても多種多様な在り方があるようですが、私はできるだけ事実と謙虚に向き合っていきたいと思っています。

2020年8月21日 坂田光永





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